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論文テーマ:「経営者予想の公表がアナリスト・コンセンサスに与える影響-企業規模の観点から-」

2015-07-31

奈良 沙織

 株式アナリスト--この仕事をご存じでしょうか?株式アナリストは企業や企業が発行する株式について調査・分析を行う金融の専門家です。彼らは証券会社や資産運用会社などの金融機関に所属し、日々、企業の分析や株式の評価を行っています。株価は個別企業の業績や経済状況などのニュースにより日々変動していますが、なかでも分析者にとって重要なのが個別企業の業績です。この業績には"過去の業績"もありますが、株価は先々を見越して動きますので、ここでは"将来の業績"がより重要になってきます。
 株式アナリストが特徴的なのはこの"将来の業績"ついて予想を作成する点です。通常、個々の株式アナリストは担当の企業や業界を持っており、企業への取材や財務諸表の分析を通して予想を行います。こうした株式アナリストが作成する将来の企業業績に関する予想はアナリスト予想と呼ばれます。投資家はこれらの予想を投資の際に用いるわけですが、プロの投資家の間では証券会社などのアナリストが作成した予想の平均値をとったアナリスト・コンセンサスというものがよく使われます。これは株式市場が平均的に企業に期待する業績と考えると良いでしょう。
 なお、アナリスト予想とは別に企業業績に関する予想としては企業が自社の業績予想を公表する『経営者予想』もあります。これまでの研究では、経営者予想が公表されると、アナリストが新しい情報を用いて自身の予想を修正するため、経営者予想の公表はアナリスト予想に影響することが明らかになっています。しかし、規模の大きな企業と小さな企業では、アナリストの数や調査に対するニーズが異なるために、その影響も異なると考えられます。
 そこで、本研究では経営者予想の公表がアナリスト予想に与える影響について企業規模別に分析を行いました。分析の結果、経営者予想が公表されると、大規模企業では経営者予想の情報が速やかにアナリスト・コンセンサスに反映されることが明らかになりました。このことは大規模企業で経営者予想がアナリスト・コンセンサスに大きな影響を与えていることを意味します。また、大規模企業では経営者予想公表後1~2週間程度で経営者予想の情報がアナリスト・コンセンサスに反映されるのに対して、小規模企業では4週間以上経っても経営者予想の情報がアナリスト・コンセンサスに反映されないこともあることが分かりました。
 以上より、小規模企業では経営者予想の情報がアナリスト・コンセンサスに反映されづらくなっていることがわかります。この要因には、株式アナリストの情報を必要としているプロの投資家のニーズが大規模企業の調査に集中しており、小規模企業については株式アナリストによる調査が十分に行われていないことがあります。このため、小規模企業のアナリスト・コンセンサスを利用する際は、最新の情報が反映されているか確認する必要があるといえます。さらに、企業側から見れば自社が公表した情報がアナリストや投資家、株式市場にきちんと伝わらないとすれば、株価の過小評価を招く恐れがあります。そのため、日ごろの情報開示が重要となることは言うまでもありません。
 日本では昔から銀行を通した借入れによる資金調達が主流でしたが、株式のような市場を通した資金調達の重要性は年々高まっています。このようなことから、株式アナリストによる企業の調査や彼らに向けた企業の情報開示は今後増々重要になっていくと考えられます。株式アナリストになるには財務や証券分析の知識が必要です。これらの知識は商学部で学べますし、授業での学びを発展させ証券アナリストの資格を取得する学生もいます。企業や株式市場に興味があれば、商学部でこれらの科目を履修してみてはいかがでしょうか?

『経営財務研究』第34巻、(野間幹晴氏との共著)