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失われた町、消えゆく村を舞台として「旅おこし」による活性化に挑戦する学生たち

上野村白井集落にある「白井宿」での交流

2015-11-30

木村 乃

■従来の「観光振興」とは異なる「旅おこし」という新しいコンセプト
 「観光振興」は観光客がもたらす外貨を獲得することを目的とした政策です。したがって、観光客の満足の獲得を目指します。これもひとつの地域活性化策でしょう。しかし、経済的な面ばかりが優先されて地元住民の幸福感を脇に置いてしまっているようにも見えます。そのような観光振興だけでいいのか。それが担当教員である私と受講生たちが共有する基本的な問題意識です。

 「旅おこし」は、「旅」をつくることによって「地域おこし」をしようという意味の造語です。主役はあくまでもその地域です。ごく普通の食生活や生活習慣、地域行事など地域における何気ない日常にみられる様々な文化を掘り起こし、これを地域外の人々に堪能していただく旅を、地域の方々とともにつくります。このような旅では、自分たちの日常を楽しんでくれるお客様の姿をみることによって、地域の人々はうれしい気持ちになります。その笑顔にふれることによって、お客様もまたうれしい気持ちになります。そして、それぞれのうれしさがつながることによって、観光客と受入れ地の住民という関係を超えた人と人の絆が生まれます。大きな経済効果は期待できませんが、人々の幸福感を高める効果がもたらされます。

【東日本大震災の被災地と過疎山村】
 本授業の実践フィールドは宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区と群馬県上野村です(注)。

 宮城県名取市閖上地区は東日本大震災の津波で壊滅した"失われたまち"です。空間的には確かにこのまちはすでに存在しませんが、ここで培われてきた共同体としての暮らしの文化は人々の記憶の中に残っています。被災地の空間的な復興ではなく、閖上という共同体の復興が私たちの活動目標です。

 平成24年度から閖上というまちにあった暮らしの文化を調査し、「新閖上風土記」を編集・発行しました。閖上の人々が愛した「閖上たこ焼き」の復活にも取り組みました。そして、これら暮らしの文化をアクティビティとして組み込んだモニターツアーを毎年企画、運営しています。

 なお、これらの実践活動は宮城県名取市の尚絅学院大学の学生との共同プロジェクトとして取り組んでいます。

 群馬県上野村は長野県境にある山村で人口1,200人台、減少の一途にある"消えゆく村"です。しかし、そこには"公共のためにみんなで協力して活動することを表す"「おてんま」という文化がしっかりと残されています。白井という集落の方々によると「"おてんま"こそが村の文化の原点」なのだそうです。落ち葉の清掃や旅人に対するおもてなしを集落の皆さんが共同で行っています。収穫物のおすそわけもそのひとつです。

 私たちはこうした"おてんま"の文化のすばらしさに感銘を受け、都会の若者にも実感してもらおうというツアーを企画、運営してきました。集落のお年寄りたちは若者が来てくれるだけで元気になると言ってくれます。若い旅人たちをまるで我が孫のようにもてなしてくれます。こうした交流を通じて、本受講生や若い旅人たちは「この村を消滅させたくない」という思いを強くもつことになります。
(注)本年度からは上野村だけでなく下仁田町を含む西上州地域を対象としています。

【社会人となって大いに役立つ3つの力】
 特別テーマ実践科目C・D「地域の元気をプロデュース」は、「旅おこし」の実践を通じて、地域の価値を見極める洞察力、地域を活性化する企画力、コーディネート力を養う授業です。今や政府・行政だけでなく、企業においても地域活性化は重要な課題となっています。本授業を履修した卒業生たちからは、実践経験を通じて身に着けたこれらの能力が社会人となってから大いに役立っているとの報告が寄せられています。

「なとりっぷ第5弾」(ツアー)で仮設住宅の皆さんと