2020.02.05
特別テーマ実践科目「東日本大震災を学ぶ」成果報告会報告
洞口拓磨(担当教員)
2020年1月22日に特別テーマ実践科目B「東日本大震災を学ぶ」の秋学期成果報告会を開催しました。
この授業では、東日本大震災からの復旧と今後の展開について科学的視点から考察することを念頭に、必要最低限の物理学における知識を駆使して、震災の事実を後追いするだけでなく、災害に対峙したときの実践的な科学的想像力の育成を目標としています。
成果報告会は、通常発表スライドを用いた口頭発表により行われますが、今回は、学生により多くのテーマに取り組んで欲しいことと、聴衆と向き合い密な議論をして欲しいとの願いから、ポスター形式による発表に挑戦しました。授業では、6つのグループ(4~5名)それぞれにおいて複数のテーマに同時進行で取り組み、最終的に合計14枚のポスターを発表するに至りました(※プログラム参照)。但し、受講生は必ず2つのグループに所属し、複数のテーマに対して幅広く貢献する形をとっています。
当日は、商学部の学生だけでなく、昨年度の受講生や自然科学系の先生方、外部専門家支援委員により、非常に濃密な質疑応答がなされました。各グループでは、ポスター毎に「予想質問」と「解答」を作成し発表に臨みましたが、それでも苦戦する場面もあったようです。しかし、春学期よりも遥かに議論に対応できたことを学生は実感しており、それが今後の自信に繋がったことは非常に意義のあることだったと思っています。また、外部専門家支援委員(※文末に記載)も含め、参加者からは非常に好評であり、驚きとともに多くのお褒めの言葉も頂きました。
商学部という文系の学生に、未曽有の災害を知るためとはいえ、包括的な科学教育を試みることは、極めて大きなチャレンジでした。東日本大震災は非常に多くの科学的・社会的側面を持つ災害です。このような課題に対し、工夫はしても妥協しないカリキュラムは、当初学生にとっては大変な内容であったに違いなく、実際にそのような感想を述べています。しかし、一度視点を大きく広げてしまえば、より多くの理解を得られたこともまた事実であり、そのような意味で、この授業はまさに学生とともに作り上げた授業だったと思っています。また、東日本大震災というテーマを扱う以上、科学的・社会的双方の観点からも授業に妥協は許されませんでした。この授業を通して学生の被災地に対する理解が深まり、ささやかではありますが復興の一助となれば幸いに思います。
最後に、お忙しい中本成果報告会にご参加頂いた外部専門家支援員の方々、及び本報告会開催にご協力頂いた商学部事務室、教務課、キャンパス課の方々に深く御礼申し上げます。ご協力有難うございました。
プログラム(ポスター発表)
- 福島第一原発事故におけるトリチウム水放出問題と生物濃縮
- 福島第一原子力事故後の現状と今後の課題
- これからの災害救助~未来に向けたドローン活用法~
- これからの災害救助~廃炉用ロボット・自動運転技術~
- 植物工場とは?
- 植物工場の社会への展開
- 再生可能エネルギーによる発電と実用化への課題①~再生可能エネルギーの現状~
- 再生可能エネルギーによる発電と実用化への課題②~次世代の再生可能エネルギー~
- 未来へ向けた「蓄エネ」の提案~福島から考える持続可能な社会~
- 大災害時における通信手段
- シミュレーションからわかる水災害の危険性
- 自助・公助・共助から考える防災情報
- 大災害と気象予測
- 地震予測の仕組みと将来の実現可能性
外部専門家支援委員
吉澤一巳 様 (東京理科大学薬学部疾患薬理学研究室 准教授)
水野統文 様 (聖路加国際病院放射線治療品質管理室 室長)
川端麻莉子 様(アマゾンジャパン株式会社人事部Assistant Program Manager)