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2020.07.01

【2019年度第1回商学部スノーピーク研究・実践奨励金 成果報告書②】阿智村訪問で見た地域とスポーツのつながり

2年 金子晃大、延原ゆりこ、田中健太、山上さくら

 私たちは、商学部スノーピーク研究・実践奨励金を受け、10月4~5日、10月25~27日の2回にわたって長野県にある阿智村を訪問した。阿智村は長野県下伊那郡西部に位置する村で、2006年に環境省に「日本一星空観測に適した場所」と認定されたことから「日本一星が綺麗な村」として有名である。またその他にも、村には南信州最大の温泉豪となる昼神温泉郷があり、多くの観光客が阿智村に足を運んでいる。今回私たちは、そのような阿智村を調査地に置き、「スポーツと地域のつながり」をテーマに調査を進めた。

 私たちが着目したのは、昭和43年から50年間にわたって阿智村で開催されている「阿智村駅伝大会」である。主に村の方々へのインタビュー調査を行い、阿智村駅伝大会は村にどのような社会的効果をもたらしているのか、50年にも続く開催にどのような意義があるのかを調査した。

 1回目の訪問では、阿智村の住民の方々に対して、阿智村駅伝大会に関するインタビュー調査を行った。訪問時に村民運動会が開催されていた小学校(3か所)や、2009年に阿智村と合併した清内路地区など、できるだけ村の広範囲に足を運び、10代~90代のさまざまな年代の方にインタビューを行った。また、調査に協力して下さった方の中には、駅伝参加者だけでなく、駅伝の運営に携わっていた方や清内路村の村長を務めていた方などもいて、非常に貴重なお話を伺うことができた。インタビュー調査を通じて感じたのは、阿智村駅伝大会は村の人々にとって非常に身近なものであるということだ。インタビュー対象者全員が阿智村駅伝大会を認知しており、多くの方が参加経験を持っていた。そして、村の方が口を揃えておっしゃっていたのは、阿智村駅伝大会を通じて、村の方との繋がりの構築や絆の再確認ができたということである。この駅伝大会は村全体が総出となって、競技や応援、運営に参加し、全員で創り上げていく大会であり、村の人々が交流や絆を深める1つの貴重な機会となっているようであった。

今回の研究で利用した、「ゲストハウスみんなのいえ」の外観
「ゲストハウスみんなのいえ」でのインタビューの様子

 2回目の訪問では、駅伝大会の運営に携わっている方を中心にインタビュー調査を行った。公民館に勤務し、ここ数年運営に携わっている稲垣さんに詳しくお話を伺った。稲垣さんによると、駅伝大会の開催にかける費用の一部は村が負担しているため、駅伝大会の開催による村への経済的効果はほとんどないとのこと。また、外部誘致を行っていないため、駅伝大会の開催は外部への阿智村のPRに繋がるものでもない。それでも50年という長い間開催が続いたのは、運営側が、阿智村駅伝大会を結果や利益にこだわる「競技」として捉えるのではなく、村の人同士の繋がりを深める「場の提供」と捉えていることにあった。また、参加者からの「また来年も頑張る」「来年もこのチームで」という声に応えようと、駅伝大会の開催を毎年続けているうちに、開催は運営側にとっていつしか「あたりまえのもの」となっていると、稲垣さんはおっしゃった。

 今回、2回の阿智村訪問を通して、阿智村駅伝大会はまさに「村人による村人のための大会」であり、村人同士の繋がりを強くするひとつの場であることがわかった。また、訪問中、多くの方が調査にご協力してくださり、阿智村に住む方々の愛情を肌で感じ、「人と人が繋がること」の温かさを感じた訪問であった。

※この研究は,株式会社スノーピーク社長・山井太様(1982年商学部卒業)からの寄付を原資とした「商学部スノーピーク研究・実践奨励金」の給付を受けて実施されました。

稲垣さんにお話を伺っている最中の様子
阿智村公民館、ここで稲垣一哉さんにお話を伺った
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