2020.07.01
【2019年度第2回商学部スノーピーク研究・実践奨励金 成果報告書1】「地域づくり」に携わる人々の衣食住・お仕事の現場に潜り込もう!
宮越若菜
今回は私がこの秋、冬にフィールドを岐阜県郡上市、香川県三豊市に置かせていただいて、各地一週間の滞在の中で「地域づくり」に携わる人々の衣食住・お仕事の現場に潜り込ませていただこう!という調査をさせていただきました。
今回の調査のきっかけは、私がゼミ活動で初めて岐阜県郡上八幡に訪れた時の衝撃と感動です。これまで私は「旅行」と言ったら、本やネットでおすすめの所を探し、自分の一緒に行く友達や家族とそれを楽しむ、というようなスタイルしか知らなかったのですが、私がそこで体験したのは、現地在住で、私達ゼミ生のお世話をしてくださることになった方が、私達を自家用車に乗せて、友人のカフェや寺、城、などを巡りながらそこの方々との普段の会話に混ぜてくださったり、フランクな懇親会の場を設け、たまたま郡上を訪れたダンサーや動画編集者の友人たちとも交わるようにしてくださったりしました。その時に『自分の居場所、ここが私のアナザースカイ』という感覚を得ました。
このように感じられたのは、やはり「人」が要ではあるけれど、その人達がどんな事を考えて、どんなことをしていて、周りの人がどういうことを感じていて、影響を与えあって、どういうことがおきているのか...
「『自分の居場所』と感じることができる」、「人が人を巻き込み合う」この空間はどのようにつくられているのだろう、ということを学びに行きました。
結局、今回の調査で学んだことは「見えない脈」を大切にすることです。
固定観念はないようにと気をつけながら現地にいったつもりとはいえ、やはりどこか自分でこの人はこんなひとでは?などと想像していたものがありましたが、大概はぶち壊されました(笑)香川県三豊市においては、しっかりものだと思っていた方が、実はお調子者で抜けていて(笑)しかし愛されキャラなのでみんなに助けてもらっていて、それがまたみんなの団結力となったり、元気となったりして、その周りにいつも人が集まるということや、また新築の海の家はとてもおしゃれな佇まいだったので、当初は私はその見た目だけに囚われていたのですが、「これはただオシャレ空間にしようと思って作っているのではなくて、この海をこれまで守ってきた人たちに喜んで使ってもらえるようにしたい、という思いが込められている」ということでした。目の前に広がる父母ヶ浜(日本のウユニ塩湖と呼ばれる)は、高度経済成長期にはここが工業地帯として埋め立てられる話が上がっていたそうで、それを阻止するために地域の方々が立ち上がり、毎朝早朝から集まって浜のゴミ拾いを続けて行ったそうです。そのため今も美しさを保って存在しているという文脈がありました。現在もゴミを拾い、浜に通い続けるご老人が毎日いらっしゃり、何を買うわけでもないけれども会話を楽しみ、海を眺め、帰っていく、その光景がとても心にじんときました。一見して知ることはできない文脈を大切にした空間づくりゆえに、地域内外から人が集まる、より一層素敵な浜にグレードアップしているのだと感じました。
調査は定量調査の形式ではなく、ありのままを「体験」してくるものでしたが、それが功を奏して、先入観なく物事を捉えられのではないかと思います。実際に会話を通して、目には見えないけれどもそこに確実にある、地域あるいは個人が紡いできた文脈、人脈を大切にすることを見つけました。
この度は私にとって大変刺激的で実りある調査となりました。
ご協力くださった皆様には時には無茶なお願いをしてしまい、ご迷惑をおかけしたこともあったかと思いますが、終始あたたかく接してくださったことに心から感謝いたします。
※この研究は,株式会社スノーピーク社長・山井太様(1982年商学部卒業)からの寄付を原資とした「商学部スノーピーク研究・実践奨励金」の給付を受けて実施されました。