2020.08.26
特別テーマ実践科目「データで読み解く「よい企業」」の現場
前田 陽(担当教員)
2020年度春学期、株式会社東洋経済新報社の寄付講座として特別テーマ実践科目C「データで読み解く「よい企業」」が開講された。
本授業の目的は就職活動など企業に向き合う際に、履修者が賢明な選択ができるよう「企業の見方」についての理解を深めることである。データを使って企業を読み解く知識は在学中にとどまらず、卒業後も重宝される。本授業はそれを効果的に修得できるよう、企業情報に特化し『週刊東洋経済』や『会社四季報』等の経済誌を出版する東洋経済新報社の西村雄吉氏(営業局営業推進部 法人グループ担当部長)をはじめ同社の方々に講師となっていただき展開された。
実施初年度の今回は17名から履修希望の申し込みがあり、全員の履修が許可された。 新型コロナウイルス感染症拡大のため、本授業は14回(補講を2回実施)全てをZoomによるリアルタイム方式のオンライン授業で行った。授業は講師による「講義」と与えられたテーマについてのグループワーク(1グループ3~4人で構成される)の「成果報告会」を基本に進められた。なお初回授業の際に西村氏が「オンライン授業は対面授業の代替であるが、オンライン授業にしかないメリットもある。ここではそれを追求していきたい」と語った通り、「講義」回でも講師が一方的に教授するのではなく、チャット機能、ブレークアウトセッション機能等を活用して、履修者全員が講師や他の履修者と積極的に意見交換できる仕掛けが数多く設けられた。春学期が開始されても、5月下旬までの「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」下、同居者以外と会話する機会に制約があった状況を鑑みると、このような授業を展開できたことはアクティブラーニングとしての学習効果は元より、履修者の精神面でも極めて好ましい効果があったのではないかと考えられる。
本授業では「業界地図」「企業比較」「SDGs」をテーマに3回グループワークが実施された。そのうち2回のワークでは、その成果を4分以内の動画という形で作成することが求められた。履修者にはグループのメンバーと協力し合ってテーマに合致したコンテンツを練り上げるだけではなく、それを授業参加者全員にも明瞭かつ魅力的なものと映る動画に仕上げることも期待された。残る1回のワークでは、成果報告会で5分以内のプレゼンを行うことも望まれた。制限時間内に収まる完成度の高いプレゼンを行うには、授業時間外でも繰り返し予行練習をしなければならない。また動画作成でもプレゼンでも言えることだが、どのワークでも個々が主体的に関わることはもちろん、他のメンバーと積極的にコミュニケーションを取って一丸となり取り組まなければ、グループとして高い成果は望めない。協力して優れた成果を上げることが期待される本授業の取り組みを通じて、履修者は社会に出て求められる仕事の進め方も身につけられたのではないかと推量する。そして成果報告会には、東洋経済新報社より編集長、編集記者の方にも参加していただいた。専門家の視点から各成果報告に対し的確なコメントや助言を頂戴した。こうしたフィードバックの豊富さも本授業の大きな特長であった。
思いがけず前例のないオンライン授業の実施となったが、グループワークの成果は各ワークとも豊作であったと思われる。第一の要因は履修者個々が強い意欲を持って本授業に取り組んだことにあるだろう。だが、それ以外にもオンラインが前提であったからこそ、昼夜を問わずメンバー全員が議論できたという環境要因も考慮する必要がある。そして何より重要な要因として「東洋経済デジタルコンテンツ・ライブラリー(DCL)が履修者全員に期間限定で開放された点」も見逃すことができない。DCLは東洋経済新報社が発行する雑誌等のデータベースである。議論のベースとなる情報に、履修者ならば誰でもいつでもどこからでもアクセスでき、議論中でも気になれば即座に情報収集ができることから生産性の高い議論ができ、それが優れたアウトプットへと結実したと窺われるのである。 結びとなるが、本授業の実施に当たり、上記DCLの利用や西村様はじめ社員の皆様からひとかたならぬご尽力を賜るなど東洋経済新報社から多大なご協力を頂戴した。改めて同社および同社の皆様に厚く御礼を申し上げる。