研究

2021.07.02

SDGsに関するシンポジウムが行われました

出見世信之(担当教員)

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 2021年6月26日(土)、日本経営学会関東部会の「SDGsと企業経営」をテーマとするシンポジウムで、司会・コーディネーターを担当しました。第1報告では、日揮ホールディングスのサステナビリティ協創部を中心とする取り組みが紹介されました。 日揮ホールディングは、石油精製プラント、LNGプラントなどを建設するエンジニアリング事業を中心に成長してきました。報告では、地球の健全性を高めることを存在意義として、気候変動対策とエネルギーの安定供給の両立を目指し、ケミカル・リサイクル技術により資源を資源に戻す資源循環や、水素・アンモニア燃料による低炭素・脱炭素化、メタン・トゥ・プロティンにより養殖事業や林農資源の高付加価値化などの事業を行っていることが紹介されました。

 第2報告では、あるべき状態に向かうことに注目するポジティブ組織学の視点から、ポジティブな逸脱行動と企業のSDGsへの取り組みについて検討されました。逸脱ともいえるような意欲的なSDGs目標を掲げ達成する企業行動により、社会的課題の解決に大きく貢献できるということでした。

掲載資料_Part2.jpg  第3報告は、商学部の三和裕美子教授により、最初に、これまでの経済モデルは「無限に豊富な資源と財がある」という空想を前提とし、ファイナンスは株主価値のような経済的価値のみを考えるものだったことが示されました。現在のサステナブルファイナンスは、経済的価値のみならず、環境的価値や社会的価値を考慮しているとの報告がありました。GDPでは人間の幸福は計れないという見方を紹介し、SDGsもGDPでは測れないとされました。サステナブルファイナンスの具体的な事例として、世界最大の資産運用会社であるブラックロックがカーボン・ニュートラルの実現へ向けての具体的な計画の開示等を投資先企業に対して求めていることが紹介されました。日本においても、金融庁がサステナブルファイナンス有識者会議を設置し、また、改定コーポレートガバナンス・コードにおいてはサステナビリティに適切に対応することが追加されているとのことです。   

 報告の後、「SDGsは日本企業との親和性があるか」などについて議論をしました。欧米の企業の中には、事業活動で十分な利益が上がったら、その一部をCSRとして社会貢献活動を行うところがあります。日本企業の中には、CSRについて本業を通じて社会に貢献することと捉えているところがあります。企業もまた、社会的使命を果たしていると考えているところもあるのです。日本企業は、他社と同じ様に、横並び的で行動するという意見もありました。これまでは、企業の横並び行動は、否定的に捉えられることもありましたが、SDGsに関する取り組みであれば、肯定的に評価できるでしょう。また、日本の若者に期待したいとの意見もありました。SDGsについては、企業のみならず、小学校から大学まで様々な取り組みが行われています。こうした若者が日本企業に就職することで、日本企業はSDGsにさらに取り組むことができるからです。  

 商学部においても、SDGsに関する研究・教育を深めたいと思います。

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