授業

2022.08.22

特別テーマ実践科目「データで読み解く「よい企業」」の現場

前田 陽(担当教員)

 2022年度春学期、株式会社東洋経済新報社の寄付講座として特別テーマ実践科目C「データで読み解く「よい企業」」が開講された。本授業の目的は就職活動など企業に向き合う際に、履修者が賢明な選択ができるよう「企業の見方」についての理解を深めることである。データを使って企業を読み解く知識は在学中にとどまらず、卒業後も重宝される。本授業はそれを効果的に修得できるよう、企業情報に特化し『週刊東洋経済』や『会社四季報』等の経済誌を出版する東洋経済新報社の西村雄吉氏(デジタルメディア局教育事業推進部長)、林政孝氏(デジタルメディア局教育事業推進部副部長)、茅根恭子氏(デジタルメディア局教育事業推進部)、田宮寛之氏(編集局記者・編集委員)はじめ同社の方々に講師となっていただき展開された。実施3年目の2022年度は22名から履修希望の申し込みがあり、全員の履修が許可された。

 2022年度は14回すべてを対面授業として実施した。授業は講師による「講義」と与えられたテーマについての3回の「グループワーク(1グループ3~4人で構成される)」を基本に進められた。

 本授業では5月9日に「業界地図」、6月13日に「企業比較」、7月11日に「SDGs」をテーマとしたグループワークの成果報告会を実施した。「業界地図」ワークと「SDGs」ワークはPowerPointを利用したプレゼンテーション報告、「企業比較」ワークは動画による報告であった。いずれの成果報告会も対面で行い、講師陣が即座にフィードバックを行った。

 「企業比較」ワークはPowerPointを利用する形式とは異なり、動画を作成して報告する形式は多くの履修者にとって初めての機会だったようで、戸惑いを見せたグループもあった。しかし、西村氏はじめ講師陣から丁寧な動画作成のコツの教授があり、さらに2回目のワークであったこともあり、過年度と比較しても全般的に優れた報告が多かったように思われる。最後の「SDGs」ワークでは、指示された報告事項が多くありながらも、すべての班がデータの取捨選別を的確に行って規定の報告時間を遵守した。また、中には講師陣を唸らせる新たな発見やアイデアを示した班もあった。

 動画作成でも対面形式のプレゼンでも言えることだが、どのワークでも個々が主体的に関わることはもちろん、他のメンバーと積極的にコミュニケーションを取り協力し合って取り組まなければ、グループとして高い成果は望めない。グループが一丸となって挑戦すれば、優れた成果を上げることができる。最初の「業界地図」ワークでは他者との関わり方に苦手意識を持っていた履修者も、「SDGs」ワークの頃には授業時間外にも積極的に意見交換を図り、授業前に報告練習を重ね、授業で洗練された報告を行っていた。それが可能だったのも、挑戦しがいのある課題が設定されていたからこそである。皆が高い意欲を持って取り組み、それを乗り越える経験を獲得でき、さらにその成功体験に裏打ちされて、次の機会でも積極果敢に取り組もうとする良好な循環が醸成されたのだと推察される。

 本授業の実施に当たり、東洋経済新報社より西村氏、林氏、茅根氏、田宮氏以外にも、岸本吉浩氏(データ事業局データベース第三部長)、青地俊亮氏(『就職四季報』編集長)、櫻木智大氏(デジタルメディア局)、茂木明梨氏(デジタルメディア局)等、多くの社員の皆様にもご協力いただいた。専門家の視点から各成果報告に対し的確なコメントや助言を頂戴したり、履修者からの素朴な質問にも親身になって回答をいただいたりした。こうした優れた見識を持つ専門家から様々な角度からの豊富なフィードバックを得られたことも、本授業の大きな特長であった。

 2022年度は本授業開始3年目にして、初めてすべての回を対面授業で実施することができた。本年度の履修者の大半は3年生であった。本学入学以来、対面形式で協力してプレゼンテーションを行う機会に恵まれなかった彼ら/彼女らにとって、本授業は大変魅力的であったようである。実際、授業終了後に履修者に対し行ったアンケートで、本授業でのワークを通じ、「チームでのすり合わせの大切さ」や「人それぞれ考えが異なりすり合わせることの難しさと大切さ」を学ぶことができた等の声を聞くことができた。さらに、「とても楽しく、ためになる授業でした。ありがとうございました!」や「これまでの人生、大抵月曜日は憂鬱だったのですが、この春学期は月曜日が楽しみでした。」等、講師陣への深い感謝の気持ちが数多く寄せられた。

 こうした満足度の高い授業を行うことができたのも、本学図書館に導入されている「東洋経済デジタルコンテンツ・ライブラリー(DCL)を活用でき、さらに講師陣から適切な利用法の教授があったからであろう。

 本年度は無事すべてを対面授業で行えたが、感染症の脅威は依然としてある。早くこうした状況が解消されることを強く願う。

 結びとなるが、本授業の実施に当たり、本年度も西村氏、林氏はじめ社員の皆様からひとかたならぬご尽力を賜るなど東洋経済新報社から多大なご協力を頂戴した。改めて同社および同社の皆様に厚く御礼を申し上げる。

 

以上

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