2023.07.28
特別テーマ実践科目C「データで読み解く良い企業」成果報告会
前田 陽(担当教員)
2023年度春学期、株式会社東洋経済新報社の寄付講座として特別テーマ実践科目C「データで読み解く良い企業」が開講された。本授業の目的は就職活動など企業に向き合う際、賢明な選択を履修者ができるよう「企業の見方」についての理解を深めることである。データを使って企業を読み解く知識は在学中にとどまらず、卒業後も重宝される。本授業はそれを効果的に修得できるよう、企業情報に特化し『週刊東洋経済』や『会社四季報』等の経済誌を出版する東洋経済新報社の西村雄吉氏(デジタルメディア局教育事業推進部長)、林政孝氏(デジタルメディア局教育事業推進部副部長)、茅根恭子氏(デジタルメディア局教育事業推進部)、田宮寛之氏(編集局記者・編集委員)はじめ同社の方々に講師となっていただき展開された。実施4年目の2023年度は21名から履修希望の申し込みがあり、全員の履修が許可された。
2023年度も14回すべてを対面授業として実施した。授業は講師による「講義」と与えられたテーマに係る3回の「グループワーク(1グループ3~4人で構成される)」を基本に進められた。
本授業では5月8日に「業界地図」、6月12日に「企業比較」、7月10日に「SDGs」をテーマとしたグループワークの成果報告会を実施した。「業界地図」ワークと「SDGs」ワークはPowerPointを利用して教卓でプレゼンテーションを行う形式、「企業比較」ワークは報告内容を動画として撮影し、そのコンテンツを報告会にて上映する形式であった。いずれの成果報告会でも講師陣が専門家としての辛口ながらも、報告した履修者の心情に寄り添った暖かいフィードバックを行った。
「企業比較」ワークは、通常のプレゼンテーション形式とは異なり、動画を作成して報告する形式である。この形式は多くの履修者にとって初めてのもので、戸惑いを見せたグループもあった。しかし西村氏はじめ講師陣から丁寧な動画作成法の教授があり、さらに2回目の成果報告会ということもあり、過年度と比較しても全般的に優れた報告が多かった。最後の「SDGs」ワークでは、溢れる熱意ゆえに既定の報告時間内に収まらない班もあったが、すべての班が指示された要件を満たした報告を行った。
動画作成形式でもPowerPointを用いたプレゼン形式でも言えるが、どのワークでも個々が主体的に関わることはもちろん、他のメンバーと積極的にコミュニケーションを取り協力し合って取り組まなければ、グループとして高い成果は望めない。グループが一丸となって挑戦すれば、優れた成果を上げることができる。最初の「業界地図」ワークでは他者との関わり方に苦手意識を持っていた履修者も、「SDGs」ワークの頃には授業時間外にも積極的に意見交換を図り、授業前に報告練習を重ね、授業で洗練された報告を行っていた。それが可能だったのも、挑戦しがいのある課題が設定されていたからこそである。皆が高い意欲を持って取り組み、それを乗り越える経験を獲得でき、さらにその成功体験に裏打ちされて、次の機会でも積極果敢に取り組もうとする良好な循環が醸成されたのだと推察される。
本授業の実施に当たり、東洋経済新報社より西村氏、林氏、茅根氏、田宮氏以外にも、岸本吉浩氏(編集局・編集委員)、青地俊亮氏(『就職四季報』編集長)、片岡美佐子氏(ビジネスプロモーション局)、駒井佐和子氏(デジタルメディア局)等、多くの社員の皆様にもご協力いただいた。専門家の視点からご教示をいただいたり、各成果報告に対し的確なコメントや助言を頂戴したり、履修者からの素朴な質問にも親身になって回答をいただいたりした。こうした優れた見識を持つ専門家から様々な角度からの豊富なフィードバックを得られたことも、本授業の大きな特長であった。
2023年度は過年度までとは異なり、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の実施であった。履修者の本授業以外の取組みも活発化したためか、以前は欠席者がそれほど目立たなかったが、本年度は目立つ回もあり、残念に思う時もあった。グループワークを重視する本授業において、一人でも履修者が欠席したり、成果報告会のための準備を疎かにすると、グループ全体の活動に支障をきたしかねない。そうした環境下ではあったが、いずれの回も、そしてどの班もが良質なプレゼンを行なえたことは、非常に喜ばしいことであった。いわば短期集中的に成果を仕上げる能力が履修者の中に培われていたからだと考えられる。そして、それはこの授業で、正確な情報を入手する方法や、どのような目的意識から報告内容を形作るべきか等、優れた講師陣から手厚い指導をいただけたからこそ、履修者一人一人の中に醸成されたのだと思われる。
こうした満足度の高い授業を行うことができたのも、本学図書館に導入されている「東洋経済デジタルコンテンツ・ライブラリー(DCL)を活用でき、さらに講師陣から適切な利用法の教授があったからであろう。
結びとなるが、本授業の実施に当たり、本年度も西村氏、林氏、茅根様、田宮様はじめ社員の皆様からひとかたならぬご尽力を賜るなど東洋経済新報社から多大なご協力を頂戴した。改めて同社および同社の皆様に厚く御礼を申し上げる。