2025.03.27
特別テーマ実践科目B「ムスリム共生プロジェクトⅡ」成果報告会
ハディ ハーニ(担当教員)
2024年度春学期・特別テーマ実践科目B「ムスリム共生プロジェクトⅡ」の成果報告会が、1月20日に開催された。本科目では、グループワークを通じて、イスラームとは何か、また主に日本に住むイスラーム教徒(以下、ムスリム)が生活の中で抱えている様々な課題について知ることから始まり、その課題の解決法を立案し、最終的には実行に移すことを目標としている。
今年度は、各グループが以下の課題をグループテーマとして設定した。
- 日本の学校給食におけるハラール対応の現状と課題について
- 日本の医療現場・病院におけるハラール対応の現状と課題について
- 日本国内のイスラーム学校の現状およびムスリムの学校選択について
- 日本社会におけるマスジド(モスク)の社会的役割および地域との協力について
これらはムスリム移民が増加する近年において、複数の国内研究者らによって実際に調査・研究が進められているテーマでもあり、社会的な要請が高まっている。各グループの課題の洗い出し、および基礎的な学習を行った春学期に続き、今学期はさらに実践的な調査・研究を行った。各グループとも、マスジドでのフィールドワークや、オンライン・アンケートの実施、インタビュー調査の実施などを積極的に行うことで、在日ムスリムの需要の実態や、現実についての理解を深めることに成功した。
全体に共通する重要な気付きとして挙げられるのは、イスラーム法の解釈には大きな幅があることや、そのこと自体がイスラーム法理論の枠組みの中で許容されているといった、基本的ではあるが見過ごされがちな点である。実践的な学びを通じて、ムスリムは柔軟に社会に調和している(できる)こと、今後もその実態について日本社会側が理解を深めることで、理想的な共生社会を目指し得ることなどについて、活発なディスカッションが行われた。日本社会では往々にして「ムスリムは多くの点で困っている」と前提視されたり、反対に「郷に入っては郷に従え」といった論理でそうした仮象に反発する動きなどが見られるが、こうした気付きが広く共有されることで、ポジティブな社会変革が起こることに期待したい。
【謝辞】
今学期の調査においては、東京ジャーミイ、大塚マスジドからフィールドワーク調査の許可を得ました。またオンライン・アンケートやインタビューの実施に際しては、日本ムスリム協会および「楽しもう!ムスリムライフ」(Facebookコミュニティ)、またゲスト参加いただいたアキール・クレシ氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)をはじめ多くの個人の皆さまからの協力を得ました。ご協力いただきありがとうございました。
(発表会の様子)