2025.12.17
大学って「退屈」? 商学部の特別テーマ実践科目で自分の学びを深めよう! ファッション編
商学部3年 高橋 遼〔商学部の現場〕編集部記者

- (左から順に)「路上から時代を読み続ける『アクロス』」寄稿:『東京人』2014年5月号(都市出版)、編集記者として携わった『流行観測アクロス』1998年3月号、1997年10月号。(手前・左から順に)アクロスの「定点観測」が紹介されている『今和次郎―その考現学』川添登(ちくま文庫)、企画・執筆を担当した『ストリートファッション1980-2020〈定点観測〉40年の記録』(PARCO出版)。
こんにちは!商学部3年、学生記者の高橋遼です。
皆さんは、「大学の授業」と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか? 私が高校生の時は、『教授の講義を座って聞き続けて退屈』と思っていました。
しかし、明治大学の商学部は、学生の「多様な学び」を非常に重視していて、一人ひとりの主体性を尊重する授業が多く存在します。
今回はその中のひとつである、特別テーマ実践科目について紹介します。
この記事では高野公三子先生が駿河台キャンパスで3,4年生向けに開講する「特別テーマ実践科目(都市文化とファッションの関係)」の魅力を、先生へのインタビューを通じてお伝えします。駿河台の店を取材して記事にしたり、クラスで商業施設を訪れたりと、とても魅力的で面白い授業を、先生に熱い想いと共にお話しいただきましたので、ぜひ最後までご覧ください!
過去に、高野先生の特別テーマ実践科目(和泉キャンパス開講)の記事も掲載されているので、あわせてご覧ください。
教員紹介: 高野公三子先生 シンクタンクからディベロッパーの株式会社パルコに入社。ファッションとカルチャーのシンクタンク部門が運営する雑誌『ACROSS』の編集記者として従事していました。一度は休刊に追い込まれながらもオンラインメディアとして復刊を果たし、2024年まで編集長として活躍。 現在は明治大学商学部などでファッションやカルチャーに関する授業を担当しています。

- 高野公三子先生 後ろはパルコ開業55周年広告ポスター
(高橋) 今日はお時間いただきありがとうございます。早速ですが、この授業ではどんな内容を扱っていますか?
(高野先生) 学生と一緒に駿河台近辺にあるお店や人びとについてリサーチをおこなっています。
昨年は、吉永小百合さんの展覧会に訪れるおじいちゃんの服装観察や、地元で商売をしている方々への大規模再開発の計画についてのインタビュー、「喫煙マップ」など、今年の春学期は、まちなかに多い外国人のインタビュー、明大生の山の上ホテルの認知度調査など記事を作成してもらいました。
授業内では、基本的に学生自身が『気になること(問い)』を見つけることから始まります。自分の感性を大切にしてほしいので、私はある種メンターのようなスタンスで、どのようなリサーチ方法、アウトプットがいいのかなどアドバイスしています。
(高橋) 記事を拝見しましたが、私たちが通う駿河台への理解が深まるユニークな記事がとても多く面白かったです。記事作成以外ではどのような活動をしていますか?
(高野先生) 大きく2つあります。1つ目は講義です。ショッピングセンターや百貨店の歴史、都市におけるディベロッパー(都市開発企業)と市民との関係について解説し、関連する映像資料なども見てもらっています。
もう1つは実際にショッピングセンターを訪れて行うリサーチです。マーケティングの視点から施設や顧客を観察したり、運営するディベロッパーの責任者の方から直接お話を伺う機会も設けました。
(高橋) とても面白そうですね。聞いていると、「ショッピングセンターのマーケティングリサーチ」と「駿河台の店舗のリサーチ」はかなり離れている領域だと思いました。 なんでこの2つを授業で取り組もうと思ったのですか?
(高野先生) どちらも「現場を見る力」を身につけてほしいという点では、同じリサーチだと考えています。
私はPARCOのマーケティングリサーチの一貫として、メディア『ACROSS』で、道行く人のファッションを分析する「定点観測」を続けていました。ファッションを観るときの視点は「ひと」「モノ」「街(場所)」です。
今の学生は大学・アルバイト・家の往復やSNS中心の生活になりがちで、実際の街をじっくり観察する機会が少ないと感じています。そこでこの授業では、商業施設を訪れて広告や空間演出を体感したり、駿河台のまちを実際に訪れ、観察したことを言葉にすることで、身近な風景を多様な視点から捉える力を身につけてほしいと考えています。
(高橋) そのような関係があったんですね。とても興味深いです。 高野先生はこの授業を通じて、学生がどんな力が身につくと思いますか?
(高野先生) まず、多角的に物事を考える力が身につくと思います。特に、『消費者』と『企画者』両方の視点を行き来できるようになることが大きいと思います。
例えば、先日学生と一緒に新宿伊勢丹百貨店のクリスマスキャンペーンを見に行きました。テーマは「江戸時代に現代の百貨店が現れた空想の世界」。そこで、消費者の視点として「江戸時代とクリスマスがコラボ?」という違和感にはじまり、企画者の視点からは「なぜこの場所にメインビジュアルを配置しているのだろう」と思考がめぐります。こうした問いを重ねることで、さまざまな角度から物事を見る力が身についていくと思います。
もう一つはスキルというより姿勢に近いのですが、「無駄にみえる時間や経験を大切にすること」です。街を歩いていると、ふだんは気に留めなかった装飾や新しいお店の発見、人びとの装いの変化など、さまざまな情報を目に入ってきます。そうしたものを意識して見ていくことで、これまで当たり前だった日常の風景が、考えるためのヒントを与えてくれる存在だと気づけるようになります。

- 今秋学期は、パルコの関連会社のメンバーと共同で「クリスマス・ディスプレイリサーチ」を実施。江戸と現代が融合した空想の百貨店を舞台に、人びとや動物たちが思い思いにクリスマスを楽しむ、伊勢丹新宿店のウィンドウディスプレイ「ふしぎのふゆげしき」の前で。
(高橋) 無駄を意識する、最近自分も忙しいので意識的に無駄を取り入れてみようと思います。
最後に、駿河台のいろいろな店を見ている高野先生一押しの店を教えてください。
(高野先生) やっぱり『magnif』です。ファッション雑誌に特化した古書店で、受講している学生とは、毎回必ず訪れています。店主の中武さんは明治大学の出身。私もお会いするたびに会話が弾みます。2026年1月頃に東京堂書店の2階に移転予定なので、機会があればぜひ足を運んでみてください。
高野先生、ありがとうございました。
商学部は講義だけでなく、学生の主体的な学習を促す授業が多く存在します。
この取材を通じて、私自身も高野先生の授業スタイルにとても共感したので、来年度受講したいと思っています。 みなさんも、自分の主体性を伸ばしてくれる、明治大学の特別テーマ実践科目を知っていただけたら幸いです。

- 神保町の古書店『magnif』



