授業

2024.03.21

特別テーマ実践科目B「ムスリム・コミュニティ共生学Ⅱ」成果報告会

ハディ ハーニ(商学部特任講師)

2023年度より新たに開講された特別テーマ実践科目「ムスリム・コミュニティ共生学Ⅰ/Ⅱ」の年度最終成果報告会が、116日に開催された。本科目では、イスラームとは何か、また主に日本に住むイスラーム教徒(以下、ムスリム)が生活の中で抱えている様々な課題について知ることから始まり、その課題の解決法を立案し、最終的には実行に移すことを目標としている。

 

先学期に実施した具体的な課題の洗い出しを受けて、秋学期には、こうした課題の中でも、①大学生として、②短期間で具体的に関与し得る課題へとブラッシュアップを行い、グループワークを通じた調査を経て、実際の行動に移すことを目指した。

3つのグループはそれぞれのプロジェクトを立ち上げた。その具体的な内容は、最終プレゼンテーションの内容を踏まえ、以下のようにまとめられる。

 

  1. 「大学におけるハラールフードの普及について」

ムスリム学生数の増加を受けて、全国各地の大学でムスリムが安心して食べることのできる食事を提供する取り組みが行われるようになった。当グループは、そうした取り組みが必要になる背景として、イスラームにおけるハラール/ハラームとは何か、ハラール(「許されたもの」の意)な食事とは何か、ハラール認証とは何か、といった点についてまず検討した。そのうえで、全国の大学における先進的な取り組みについて紹介しつつ、明治大学での現状についても情報を調査した。駿河台キャンパスでは、実際にハラールなラーメンが提供されていることなどを確認した。和泉キャンパスではムスリム学生の数が少ないこともあってそのような取り組みは見られないものの、ノンムスリムに対してもそうした状況について啓蒙する意味を込めて、ハラールなケバブサンドイッチを提供するキッチンカーをキャンパスに誘致するアイディアを提案した。

 

  1. 「大学における礼拝所設置の取り組みについて」

大学構内でムスリム学生が礼拝のために使用できるスペースを設けている大学は増加傾向にある。これはムスリムに限らず近年広範な意識下が進んでいる、多様性に対して開かれたキャンパスづくりを目指す動きの中で進行している。こうした全国の取り組みについて情報を調査したうえで、明治大学での取り組みについても調査を行った。駿河台・生田・中野各キャンパスでは、少数ながらムスリム学生の利用が見込めるとして祈祷室を設置していることがわかり、その経緯についても各事務室とのインタビュー等を通じて明らかにすることができた。和泉キャンパスではこうした取り組みはないものの、ムスリム学生数の増加が長期的には期待されることから、今後の祈祷室設置の可能性について検討を行った。

 

  1. 「ムスリム学生向けハラールマップの製作」

ムスリム学生が日常的に直面する問題として挙げられるのが、ハラールな食事の確保という問題である。特に留学生の場合、ハラールかどうかの判断は各自で行うことが基本であるが、食品材料表示を読むことができないなどの理由で判断ができず、結果的に非常に限られたものしか食べることができずに苦慮している例が見受けられる。しかし実際には大学付近でよく目にするチェーン店やコンビニ等においても、食べることができる食事は少なくない。このプロジェクトではこうした食品・食事をハラールと認定するのではなく、「ムスリムフレンドリー」として紹介することで、上記の課題に対処することを提案した。複数の店舗へのフィールドワークを実施し、SNSで情報を発信する仕組みが提案された。

 

なお、最終プレゼンテーションにはゲスト講師として、兼定愛氏(慶應義塾大学非常勤講師)を招いた。慶應義塾では同様のテーマで先進的な取り組みが見られ、彼女もそうしたプロジェクトへの参加経験があることから、各プレゼンへの建設的なコメントをいただいた。着眼点や動機、情報の分厚さ等について高い評価をいただきつつ、今後につながる改善点の指摘もいただくことができた。

全てのグループのプロジェクトは、いわばアイディアの提案からプロトタイピングまでを包括するもので、主体的なグループワークへの参加、フィールドワークの実施がなければ実現しない非常に実践的な内容となっていた。重要なのはそうした活動を通じて実際に成果があがったかどうか、という点よりも、参加者各人の異文化への開かれた態度の情勢、および現実的な共生の在り方についての認識の変化であることをゲスト講師と共に確認し、締めくくりとすることができた。

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最終プレゼンテーションの様子(一部)

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