授業

2021.07.30

特別テーマ実践科目「データで読み解く「よい企業」」の現場

前田 陽(担当教員)

 2021年度春学期、株式会社東洋経済新報社の寄付講座として特別テーマ実践科目C「データで読み解く「よい企業」」が開講された。本授業の目的は就職活動など企業に向き合う際に、履修者が賢明な選択ができるよう「企業の見方」についての理解を深めることである。データを使って企業を読み解く知識は在学中にとどまらず、卒業後も重宝される。本授業はそれを効果的に修得できるよう、企業情報に特化し『週刊東洋経済』や『会社四季報』等の経済誌を出版する東洋経済新報社の西村雄吉氏(デジタルメディア局教育事業推進部長)、林政孝氏(デジタルメディア局教育事業推進部副部長)はじめ同社の方々に講師となっていただき展開された。実施2年目の2021年度は23名から履修希望の申し込みがあり、全員の履修が許可された。

 本授業は当初14回すべてを対面授業として実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言ならびに本学活動制限指針レベル引上げの影響で、対面授業を実施できたのは5回(4/12、4/19、4/26、6/28、7/5)にとどまり、残る9回はZoomによるリアルタイム方式のオンライン授業で行った。授業は講師による「講義」と与えられたテーマについての3回の「グループワーク(1グループ3~4人で構成される)」を基本に進められた。

 本授業では5月17日に「業界地図」、6月14日に「企業比較」、7月12日に「SDGs」をテーマとしたグループワークの成果報告会を実施した。それぞれの成果報告会の報告形式は異なるものであった。「業界地図」ワークはZoomの画面共有でPowerPointを利用したプレゼンテーション報告。「企業比較」ワークは動画作成・配信による報告。「SDGs」ワークは各班が自由に形式を選択できる形で行われた。

 報告時間はいずれの成果報告会でも5分間であった。Zoomの画面共有でPowerPointを利用する形式とは異なり、動画を作成して報告する形式は多くの履修者にとって初めての機会であったようである。当初は戸惑いを見せたグループもあった。しかし、円滑なコミュニケーションを通じて協力し合うことができたグループの中には、動画にBGMを入れたりと、他のグループの聴衆にも魅力的なコンテンツに仕上げたところもあった。そして、自由に報告形式を選択できた「SDGs」ワークでも動画を作成したグループがあった。動画作成でも画面共有のプレゼンでも言えることだが、どのワークでも個々が主体的に関わることはもちろん、他のメンバーと積極的にコミュニケーションを取って一丸となり取り組まなければ、グループとして高い成果は望めない。グループが一丸となって挑戦すれば、優れた成果を上げることができる。「業界地図」ワークでは他者との関わり方に苦手意識を持っていた履修者も、「SDGs」ワークの頃には授業時間外にも積極的に意見交換を図り、洗練された報告を行っていた。それが可能だったのも、挑戦しがいのある課題が設定されていたからこそである。皆が高い意欲を持って取り組み、それを乗り越える経験を獲得でき、さらにその成功体験に裏打ちされて、次の機会でも積極果敢に取り組もうとする良好な循環が醸成されたのだと推察される。

 本授業の成果報告会には、東洋経済新報社より西村氏、林氏以外にも、田宮寛之氏(編集局記者・編集委員)、岸本吉浩氏(データ事業局データベース第三部長)にもご協力いただいた。専門家の視点から各成果報告に対し的確なコメントや助言を頂戴した。こうしたフィードバックの豊富さも本授業の大きな特長であった。

 すべてを対面授業で実施する予定であったが、残念ながら本年度もオンライン授業が多くの割合を占めてしまった。しかし、グループワークの成果は各回とも豊作であった。それは履修者個々が強い意欲を持って本授業に取り組んだことにある。だが、それだけではない。「東洋経済デジタルコンテンツ・ライブラリー(DCL)が本年度より本学図書館に導入され、それを活用できたことも見逃せない。DCLは東洋経済新報社が発行する雑誌等のデータベースである。議論のベースとなる情報に、履修者ならば誰でもいつでもどこからでもアクセスでき、議論中でも気になれば即座に情報収集ができることから生産性の高い議論ができる。それが成果報告会における優れたアウトプットへと結実したと思われる。

 実際、最終回の授業で履修者にアンケートを行ったところ、66.7%が「非常に満足」、33.3%が「まあまあ満足」と回答し、履修者全員が本授業に満足していた。また、次年度も本授業が開講された場合、52.4%が「友人・後輩に履修を強く勧めたい」、47.6%が「友人・後輩に履修を勧めて良い」と回答し、同じく履修者全員が友人・後輩に履修を勧めたいとの感想を持つほど、非常に有意義な授業であった。

 本年度の対面授業は5回にとどまったが、それが印象的で、対面を通じたコミュニケーションの重要性を訴える履修者もいた。もちろんその一方で対面授業に付随する感染拡大のリスクに懸念する声があるのも事実である。現下の状況が改善され、皆が安心して対面授業に臨める環境が早急に整うことを強く願う。

 結びとなるが、本授業の実施に当たり、本年度も西村氏、林氏はじめ社員の皆様からひとかたならぬご尽力を賜るなど東洋経済新報社から多大なご協力を頂戴した。改めて同社および同社の皆様に厚く御礼を申し上げる。

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