2025.07.18
ゲストスピーカーによる特別授業実施報告:小林慎一朗氏【テーマ:プロサッカー選手のキャリアトランジション】
澤井和彦(担当教員)
1.実施日
2025年 6月13日(金)18:50~20:30
2.実施場所
リバティタワー1074教室
3.科目名
総合学際演習
4.ゲストスピーカー
小林慎一朗氏(肩書:プロサッカー選手会・マネージャ)
5.実施内容
本講義は、日本プロサッカー選手会(JPFA)で長年活動し、日本パラカヌー連盟会長も務める小林慎一朗氏を招いて行われた。小林氏は1973年生まれで、サッカー日本代表選手のマネジメントやテレビ番組制作を経て、16年以上にわたり選手会で新人から引退選手のサポート、キャリア支援、社会貢献活動など幅広く携わっている。
■日本プロサッカー選手会(JPFA)の概要
JPFAは1996年設立、2011年に現名称へ変更。男子・女子・海外支部を持ち、約1,900人が所属。労働組合と一般社団法人の二つの法人格を持ち、選手の労働条件改善や社会貢献活動、被災地支援、サッカー教室、トライアウト開催、指導者育成、キャリア勉強会、選手間投票によるアワード創設など多岐にわたる活動を展開している。組織運営は代議員制で、各クラブ支部長が総会で意思決定を行う。
■サッカー選手のキャリアとセカンドキャリア
サッカー選手は引退年齢が早く、退職金制度もなく、年俸1,000万円未満が7割と経済的に厳しい現実がある。Jリーグ契約満了後の進路は約75%がサッカー関連(指導者、クラブスタッフ、スクール運営等)に残り、一般就職は約12%、未定が約11%。プロ野球も同様の傾向。Jリーグから外れても地域リーグ等で現役を続ける選手も多い。
セカンドキャリアへの準備期間は短く、現役中から意識して準備する選手は少ない。アスリートアイデンティティが強く、引退後の自分をイメージしにくいことや、プロ契約上副業が難しいことも要因。ネットワークやビジネススキルの不足も課題で、就職は知人紹介が多く、転職を繰り返す例もある。
■キャリア支援の現状と課題
Jリーグは新人研修やアカデミーでのキャリア教育を行うが、現役・引退選手向けのキャリア支援は選手会が担う。無料職業紹介事業はコスト等の理由で廃止。キャリアトランジションは怪我や契約満了など予期せぬ要因が多く、準備期間が極めて短い。今後、シーズン移行(夏開幕)で就職準備期間が延びることに期待が寄せられている。
■質疑応答・その他
●大卒選手はJ3スタートの場合、プロへのこだわりが比較的薄く、就職準備を意識する傾向がある。
●サッカーでは契約金は商習慣的に少ない。ただし来季から新人選手の年俸上限が引き上げられる。
●引退後のキャリアは、準備していた選手ほど長く安定している。
● クラブは契約満了選手へのサポートは基本的に行わず、就職は選手の知人紹介が多い。
●デュアルキャリア(現役中の並行準備)は制度・文化的に難しい。
●少子化や部活動改革で競技人口減少が懸念され、指導者育成や普及活動も重要課題。
■まとめ
サッカー選手のキャリア形成・移行には多くの課題があり、選手会は労働条件改善とともに、キャリア支援や社会貢献活動を強化している。今後はシーズン移行や支援制度の拡充、選手自身の意識改革が求められる。