研究

2015.07.31

国連グローバル・コンパクト再考-普遍的価値と経営倫理の側面から‐

出見世 信之

 今年、6月21日に開催された日本経営倫理学会全国大会において、「国連グローバル・コンパクト再考−普遍的価値と経営理念の側面から-」というテーマで、報告しました。皆さんは、国際連合が企業とどのようにかかわっていると思いますか。国連グローバル・コンパクトは、当時のアナン国連事務総長の提唱により、2000年に公表されました。企業などの組織に対して、人権の擁護,労働者の権利の尊重,自然環境の保護,贈賄などの腐敗の防止を求めるものです。これらは、民主的な国であれば、どこでも普遍的に支持されるものです。
 企業は、設立された国でのみ活動していれば、その国の法律を守っていれば、何も問題はないかもしれません。それが先進国であれば、人権、労働、環境、腐敗行為に関する法律が整備されています。しかしながら、発展途上国となると、人権や労働に関する法律さえ、整備されている訳ではありません。整備されていたとしても、それを厳格に守らせることが難しいこともあります。現在、先進国に本社を置く企業が途上国の企業に商品の生産させることも少なくありません。途上国の企業の中には、6歳未満の児童を働かせたり、賃金を払わずに強制的に働かせたりしているところもあります。
 企業が国連グローバル・コンパクトを守れば、生産を委託しているところに対して、児童労働や強制労働などを用いないことを求めるようになります。人権や環境の保護、腐敗防止についても同様です。ただ、国連グローバル・コンパクトには、公正など、企業活動にとって重要な価値が含まれていません。企業の中には、公正や誠実などの価値を経営理念のなかで明記しているところもあります。経営理念が企業の行動に与えているという研究結果も少なくないことから、企業が国連グローバル・コンパクトを経営理念の中に包含できることを結論として、報告をまとめました。

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