2025.05.26
ゲストスピーカーによる特別授業実施報告:一般社団法人エシカル協会 代表理事の末吉里花氏がマーケティング管理論にてエシカル消費の最新動向について講演
加藤拓巳(担当教員)
1.実施日
2025年 5月 19日(月) 15:20~:17:00
2.実施場所
駿河台キャンパス1022
3.科目名
マーケティング管理論
4.ゲストスピーカー
末吉里花氏(肩書:一般社団法人エシカル協会 代表理事)
5.実施内容
2025年5月19日に、加藤拓巳准教授の担当するマーケティング管理論にて、一般社団法人エシカル協会 代表理事の末吉里花氏に「エシカル消費の普及に向けた考え方と最新動向」をテーマに講演して頂いた。エシカル消費をするか否かは、「自分が問題の一部になるのか、自分が問題解決の一部になるのか」の決断であることが強調された。
<概要>
- キリマンジャロを登頂して、そこで見た氷河が溶けている様を見て、「地球はすべて繋がっている」ということを認識して、環境問題の解決をライフワークとして取り組むことを決意した。その後、フェアトレードに出会った。フェアトレードは日々の消費行動を通じて、環境に貢献できる有効な手段であることを知り、それに注力し始めた。私たちは消費者でありながら、自分の行動で世界に貢献することができる。
- エシカルとは、「エいきょうを、シっかりと、カんがえル」と捉えている。エシカルは、サステナビリティ、ESG、SDGsなど全ての土台となる考え方。商品が作られる裏側を知らないまま消費をすることは、人権侵害や環境破壊に加担してしまうリスクがある。よって、商品が生まれる裏側を知って、責任を持った消費行動をすることが重要。これをエシカル消費といい、「顔の見える消費」「物語のある消費」ともいう。
- エシカル商品は値段が高くなってしまう。そのため、価格を気にする消費者を見ている企業は積極的に開発しにくい問題がある。その結果、エシカル消費への関心はあっても、消費行動に移したのは1/3程度にとどまる。
- 関心を持っている人を増やし、潜在的消費者の裾野を広げていくことが重要。興味を持った人は、非エシカル商品を避けるので、日本では920億円も非エシカル商品の購入をボイコットされている。この傾向を強化していく必要がある。
- ベルリンに安いTシャツの自動販売機を設置し、お金を入れると、その生産現場の背景ストーリーが映像で表示される。その後、買うか、寄付するかという選択肢を提示する取り組みが行われた。その結果、ほとんどの人が寄付を選択した。つまり、エシカル消費の促進には、知ってもらうことが第一歩として有効な手段である。問題が認識されていながら、行動に移されていない場合は、感情に訴えかけるべき。
- 消費者に手に取ってもらうためのインセンティブづくりとしては、消費者の自己効力感を高める方法がある。スーパーの買い物かごを返す場所で、ノントレイへの置き換えの是非を買い物かごの数で調査した。賛成多数であったため、それを実行に移すと、消費者は自分の意見が具現化され、自己効力感を得られる。
- 消費者に受け入れてもらうための方法としては、デフォルト設定を変えることが有効である。すると、抵抗感なく、消費者は受け入れやすい。例えば、家電メーカーが洗濯機のすすぎ回数を2回から1回に減らしてデフォルトにすると、それを消費者は当たり前に利用する。あるいは、共感を得るには、理想の実現に向けてまだできていないことを企業が発信すると、消費者はそれを応援してくれる。日本企業は完璧を求めて、できていることしか伝えない。そのマインドを変えて、できていないことも発信していくべき。
- 自分がエシカル行動を止めると、あなたは問題の一部になる。自分がエシカル行動を続ければ、あなたは問題解決の一部になる。この大きな社会問題を解決するには、一人一人の消費者が行動し続けるしかない。
<プロフィール>
末吉里花(すえよし りか)
一般社団法人エシカル協会代表理事
慶應義塾大学総合政策学部卒業。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。エシカルな暮らし方が幸せのものさしとなる持続可能な社会の実現のため、日本全国でエシカル消費の普及を目指している。中学教科書にも執筆。著書に『はじめてのエシカル』(山川出版社)、絵本『じゅんびはいいかい?〜名もなきこざるとエシカルな冒険〜』(山川出版社)、『エシカル革命』(山川出版社)ほか。東京都消費生活対策審議会委員(2016/5~2024/4)、日本エシカル推進協議会理事、日本サステナブル・ラベル協会理事、中央環境審議会循環型社会部会、産業構造審議会産業技術環境分科会資源循環経済小委員会委員、中央環境審議会静脈産業の脱炭素型資源循環システム構築に係る小委員会委員、消費者教育推進会議委員(2023.10〜)、一般社団法人資源循環推進協議会理事、林野庁里山広葉樹利活用推進会議委員、日本ユネスコ国内委員会委員、中央環境審議会委員(総合政策部会)、CEコマース制度整備に関する検討会委員、慶應義塾大学環境情報学部の特別招聘准教授(非常勤)、鎌倉市エシカル消費推進アドバイザー、鎌倉エシカルラボ共同代表、ほか。https://ethicaljapan.org