授業

2026.03.26

特別テーマ実践科目B「イスラーム世界実践探求Ⅱ」成果報告会

ハディ ハーニ(担当教員)

2025年度の『特別テーマ実践科目AB(イスラーム世界実践探究)』では、現代世界においてますます重要性を増すイスラームについて、1年間を通じて多角的な理解を深めてきました。春学期は基本文献の精読や東京ジャーミイ訪問、学内コンビニでのハラール食品調査などを通じて基礎を固め、秋学期は各自の研究テーマをさらに深化させました。書評発表や中間報告会を重ね、最終発表では活発な議論が交わされています。中には海外フィールドワークの成果を持ち帰った学生もおり、1年間の成長が実感できる学期となりました。

ムスリムが少数派であるタイでイスラム保険(タカフル)を提供する企業を訪問し、経営陣への対面インタビューを実施した学生は、「一社二制度」モデルやシャリーア委員会の設置といった制度的工夫と課題を明らかにしました。日本への導入可能性だけでなく「導入しないという選択肢」にまで踏み込んだ批判的視座が光ります。

ウィリアム・ジェイムズの『宗教的経験の諸相』を精読した学生は、その理論を片倉もとこの「ゆとろぎ」概念や日本人ムスリムの改宗体験と結びつけ、「なぜ人々は宗教に惹かれるのか」という問いに独自の答えを導きました。西洋哲学とイスラーム哲学の比較に取り組んだ学生は、井筒俊彦らの著作も参照しつつ、理性と啓示の関係を再検討し、価値観の「すり合わせ」が対話の土台となりうることを論じています。

ケドゥーリーの『ナショナリズム』を手がかりに、フランス革命以降の国民主権の理念が持つ光と影を分析した学生は、難民問題の思想的背景を理解するための基盤を着実に築きました。また、80名へのアンケート調査と比較宗教学の知見を用いて「推しは神になりうるのか」という問いに挑んだ学生は、献金・祭壇・聖地巡礼など宗教行為との類似と相違を丁寧に検討し、現代日本の精神性を照射しています。ヒジャブの再興要因を分析した学生は、エジプトやインドネシアの事例を日本の着物文化に応用できるか検討する比較文化的な視点で研究をまとめました。

1年間を振り返ると、学生たちは春学期の基礎的な学びから出発し、秋学期には自らの問いを立て、文献調査やフィールドワークを通じて一次資料を収集・分析する力を着実に身につけました。テーマは保険制度から哲学、ファッション、ポップカルチャーまで多岐にわたりますが、いずれもイスラームを一枚岩として捉えるのではなく、その多様性と現代社会との接点を探ろうとする姿勢で貫かれています。この1年で培った「異なる価値観を理解しようとする力」が、今後の学びと社会での実践に活きることを期待しています。

 

(最終成果報告会の様子 ※一部)

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