2026.08.04
ゲストスピーカーによる特別授業実施報告:三井千絵氏(野村総合研究所 プリンシパル研究員)『日本の資産運用業界の未来』
三和裕美子(担当教員)
本講義では、野村総合研究所の三井千絵氏をお招きし、「日本の資産運用業界の未来」をテーマにご講演いただきました。日本の株式市場が抱える課題から、新興独立系運用会社の重要性、そして個人と投資との関わり方に至るまで、多角的な視点から講義が行われました。概要は以下の通りです。
1. 株式市場の役割と日本の課題
o 株式市場は企業にとっての資本調達の場であり、投資家にとっての資産運用の場である。
o 日本の株式市場の課題として、上場企業数が約4000社と多い一方で機関投資家の売買が大手企業に偏っている点、中小型企業のガバナンスや開示における問題、また適用会計基準の混在などである。
2. 時価総額の小さい企業と投資家(資産運用におけるサイズの問題)
o 大手運用会社は運用規模が大きいため、時価総額の小さい中小型企業に投資・カバーすることが構造的に困難である。
o これに対し、規模の小さい独立系運用会社であれば、中小型企業への投資や強固なエンゲージメント(投資先企業への働きかけ)、集中投資が適している。
3. 海外動向と新興独立系運用会社(新興マネージャープログラム:EMP)
o 米国などの事例(ニューヨーク市退職年金制度やMIT基金等)を引き合いに、運用者の多様性(DEI)や新興運用会社のハングリー精神・独自の株式選択能力がパフォーマンス向上につながる可能性がある。
o 日本で独立系運用会社が少ない背景(ライセンス取得のハードルや大手委託偏重など)を踏まえ、2023年に導入された「アセットオーナープリンシプル」や新興マネージャープログラム(EMP)を通じた多様な運用者の育成の重要である。
4. 個人と投資・アセットオーナーとしての視点
o 年金や保険の受益者である個人自身も「アセットオーナー」の一員であるという意識を持つことの大切さである。
o 個別株投資や株主総会への参加を通じてインベストメントチェーンに参画し、企業の成長やガバナンスを直接学ぶことの面白さや意識についてのアドバイスをいただき、盛況のうちに講義は終了した。



