2023.07.05
2023年度(春)ゲストスピーカーによる特別授業:アンドリュー A. アダムス氏
村田 潔(科目担当教員)
ゲストスピーカーによる特別授業について、以下内容で実施いたしました。
1.実施日
2023年 6月12日(月)13:30~15:10
2.実施場所
和泉キャンパス 001教室
3.科目名
特別テーマ実践科目A
4.ゲストスピーカー
アンドリュー A. アダムス氏(肩書:明治大学大学院経営学研究科兼任講師,研究・知財戦略機構研究推進員)
5.実施内容
ゲストスピーカーであるアンドリュー A. アダムス博士(明治大学ビジネス情報倫理研究所副所長)による特別講義「Q & A/discussion session on information overload, misinformation, disinformation」では,現在のデジタル情報社会において発生している情報の過剰発信・流通と誤情報(misinformation)ならびに偽情報(disinformation)の発信と流通という問題について,受講生とゲストスピーカーとの間で英語での質疑応答ならびに議論が行われた。その中でも,以下の点が現代社会にとって特に重要な論点であると認識された。
➀誰もが簡便に情報発信をすることのできる技術環境が出来上がっている今日,情報の過剰発信は技術的には常に発生可能な現象であるといえる。このことはたとえ正しい情報が発信されるとしても,情報プライバシー侵害を引き起こしうるものであり,特にソシアルメディアのように他者に関する画像や映像を含めた情報を気軽に発信することができるメディアが普及したことは,これまで以上に情報プライバシーの意図的/非意図的な侵害が発生することが認識されなければならず,適切な対応策が考えられなければならない。
②内容的に誤った情報を,それと気付かずに発信あるいは拡散させてしまう誤情報の流通と,意図的にそうした情報を発信あるいは拡散するの偽情報の流通は,現象としては区別されるべきである一方,いずれの流通も社会に対する同等の悪影響を及ぼしうるものである。とりわけ社会の分断や市民社会の退廃にこうした情報の流通が結びつかないよう,適切な対応を考え,実施する必要がある。
③情報の過剰発信や誤情報の発信,偽情報の発信は,「意図」(intention)と「意識」(consciousness)を持つヒューマンアクターが行うだけではなく,意図も意識も持たないAIシステム(特に生成AIシステム)が同様の現象を引き起こすことがある。この場合,責任の所在が非常にあいまいになるため,AIコンピューティングにおける責任体制の確立が急務である。