授業

2024.06.19

ゲストスピーカーによる特別授業:立川がじら氏【テーマ:話芸の日本語表現】

石出靖雄(担当教員)

1.実施日

2024年6月17日(月)10:50~12:30

2.実施場所

和泉ラーニングスクエア502

3.科目名

日本語表現論A

4.ゲストスピーカー

立川がじら氏(肩書:落語立川流二つ目)

5.実施内容

 落語立川流の立川がじら氏より、落語の実演をしていただきました。そのほか、落語立川流の立川笑王丸氏にもご参加いただきました。お二人とも明治大学落語研究会のご出身で、現在プロの落語家として活躍されています。

 はじめに、立川がじら氏が高座に上がり、落語入門とでもいうべき基本的な落語知識をレクチャーされました。落語家とはどういうものであるか、演じるときに扇子や手ぬぐいを使うことなど、実演を交えて紹介なさいました。その後、古典から現代風までの小噺の面白さを紹介されました。立川流の創始者である立川談志氏がシュールな小噺を始めたことを紹介し、落語が古臭いものでないことを教示されました。

 つづいて、立川笑王丸氏が前座として高座に上がりました。ご自分が総合数理学部のご出身であることや、面白いから笑うのではなく笑うから楽しくなるのだということを語られ、会場の雰囲気を和ませていました。演じられたのは古典落語の「牛ほめ」でした。

 「牛ほめ」は、ぼんやり者の与太郎が、おじさんの新築した家をほめに行く話です。難解な挨拶の文句を覚えるシーンや、ほめに行ったものの間違えてしまう場面など、山場の多い話でした。現代の学生にもわかりやすいように何気なく解説を混ぜたり、理解の難しい言葉は省略したりするなどの配慮がなされていました。

 最後に、立川がじら氏が高座に上がり、古典落語の「親子酒」と「風呂敷」を熱演されました。

 「親子酒」は、商家の主人とその息子が酒を断つ約束をするが、それぞれに約束を破ってしまうという噺です。父親は、息子が酒でしくじらないように、自分も酒を辞めるから息子にも辞めるように約束をします。しかし、隠居状態で他に楽しみもない父親は我慢できません。少々ならば酔ったように見えないだろうと、ばれないように飲み始めますが、結局べろべろになってしまいます。「少々ならば」という考えや、酔っているくせに自分はしっかりしていると思っている様子は、現代にも通じる滑稽さが見られます。息子の方も外で飲んできてしまい愚かな言い訳をします。酔ったもの同士の滑稽な問答が見せ場です。がじら氏は、酔っ払いの特徴を捉えた言動を見事に演じていました。しかし、それは決して大げさでなく、聞き手が見入ってしまうような芸でした。

 「風呂敷」は、嫉妬深い夫が留守のところに、たまたま若い男がやってきて、せっかくだからと女房お茶を淹れていると、夫が帰ってきてしまうという場面が発端です。若い男がいるのを知ったら嫉妬深い夫は何をするかわからないと思った女房は、とっさに押し入れに若い男を隠します。家に入って来た夫は押し入れの前に座って酒を飲み始めてしまい、若い男は押し入れから出ることができません。女房が近所の「兄い」に相談に行き、「兄い」が風呂敷を使ってうまく若い男を逃がすという噺です。「兄い」の機転の利いた方法と、夫の間抜けなところが、笑いを誘います。がじら氏は従来のオチを変更して、より緊迫感のある終わり方になっていました。

 これら二席の落語の舞台は、現代と生活様式の異なる江戸から明治時代ですが、がじら氏は言葉を選び、また現代の用語に置き換えるなどの工夫を行い、非常に分かりやすい落語に仕上げていました。

 演じられた噺は古典落語ではありますが、その中に現代風なアレンジがほどこされており、落語が現代にも根付いている話芸であることが実感できるものでした。

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