卒業生訪問

2021.05.30

【卒業生訪問】 榎並重人さん (1987年卒業)

出見世信之(担当教員)

5月15日、出見世ゼミナール19期生が商学部の卒業生で、第一生命株式会社人事部長、第一生命経済研究所常務取締役を歴任された榎並重人さんをZoomで訪問しました。榎並さんは、2021年3月に本学の専門職大学院グローバルビジネス研究科を「優秀学生(次席)」として修了されています。学生から榎並さんに様々な質問をしました。

Q:第一生命、第一生命経済研究所において担当された、担当している仕事について、お話ください。

A:私は、1987年、商学部を卒業し、第一生命に就職しました。最初は、営業を担当し、その後、マーケティング戦略や、第一生命が東京証券取引所に上場する際にプロジェクトリーダーを務めました。その後、人事部長として、新卒採用の最終面接を担当した後、第一生命経済研究所に移り、同社の経営を担ってきました。現在は主に、第一生命グループの社員のキャリア開発の支援で、キャリアに関するトレーニングやコンサルティングを担当しています。

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Q:社員が同じ目標に向かえるようにするために、どのようなことをされていますか。

A:皆が同じビジョンを共有できるようにすることが重要です。ビジョンはキャッチコピーではなく、一人一人に腹落ちしていることが大切で、行動に現れていることが重要です。リーダーは、みんなが共感できるビジョンを掲げると同時に、率先垂範で自ら行動することが大切です。

Q:なぜ、専門職大学院ビジネスグローバル研究科に入ろうと思ったのですか。そこで学んだことで実際に繋がることはありましたか。

A:55歳で大学院に入学しましたが、人生100年時代となり、「学びの期間」「働く期間」「定年後の余暇」という明確に時期が区分されたこれまでの人生、ライフサイクルは、大きく変わってきています。30数年のビジネス経験を再検証すると同時に、今後も自分自身の価値を向上させたいという理由で大学院にチャレンジしました。大学院では組織やキャリアを中心に修士論文をまとめ、現在の仕事にも役立てています。

Q:大学時代、いつ頃、どのくらい先のことまで見据えて行動してきましたか。

A:自分の大学時代は、あまり先のことなど考えていませんでした。当時は、いい会社に入れば安泰の時代、つまり人生やキャリアが今のように多様ではなかったので、あまり考える必要がなかったのかもしれません。その点、こうした質問を含め、今の若者は自分たちより勉強し、将来のことを考えていると思います。

Q:保険業界では、商品の差別化が難しいと思いますが、どのような工夫・戦略をとってきましたか。

A:保険業界のみならず、金融業界は全般的に差別化しにくい業界だと思います。理由としては、認可事業であったり、既に国内では成熟市場であったりすることが挙げられます。これからは、テクノロジーの発展などにより、金融業界、保険業界という概念がなくなるかもしれません。保険会社の根源的なミッションは、保険商品を売ることではなく、安心や安全をお客さまに提供することであり、安心安全は保険のみならず、健康で長く生活できるようにすることでもあります。例えば、疾病関連のビックデータを集積し、健康で長く生きるためにはどうしたらよいかといったノウハウなども今後お客さまに提供する重要な価値になっていくと考えます。

Q:新型コロナウイルスの影響で、第一生命にはどのような変化がありましたか。

A:私たちの会社はお客さまとのコミュニケーションが生命線です。コロナ禍で顧客さまとの直接的なコミュニケーションに大きな支障が出ているので、オンラインや様々なテクノロジーを駆使して、お客さまの状況を確認したり、新しい商品を提供ご説明させていただいたりしています。在宅勤務も進めていますが、社員同士のコミュニケーションは不足しがちなので、社員の意識合わせが目下の課題となっています。

Q:アフターコロナの時代において、企業に求められる人材はどうなりますか。

A:アフターコロナの時代においても企業が求める人材は大きくは変わらないと思います。コロナ禍で問われるのは、変化対応力、環境適応力だと思います。コロナ禍で生活様式が大きく変わる等、どうしてもネガティブにとらえがちですが、こうした大きな変化にむしろポジティブにどのように対応していったのかというように思考の転換が必要かもしれません。大学2年生の皆さんであれば、入学時からコロナ禍に直面し様々な制約や不満があると思いますが、そこから学んだこと、行動したことなどを強みにすればよいと思います。環境変化は新たなことを産み出すよい機会でもあります。

Q:学生時代に意識して取り組んだ方がよいことは何ですか。

A:自分を成長させることが大事だと思います。これまでの自分自身を客観視し、自分の強み、スキル、リーダーシップやコミュケーション力などのコンピテンシーを把握し、これからの社会環境を考え、その中での自分の役割や期待を考えることが大切です。

Q:出見世ゼミナールでは、「よい企業」について学んでいますが、どのような企業が「よい企業」でしょうか。

A:「よい企業」については、いろいろなところで議論されていますね。SDGsの達成が求められたり、ESGで評価されたり、時代によって「よい企業」の価値観は大きく変わっていると思います。私も昔は、稼ぐ企業、利益を出す企業がよい企業と考えていましたが、稼ぐ中には誰かの犠牲もあったかもしれないと思うようになりました。最近は、企業の事業活動に関わる全ての人々が幸せであることが「よい企業」だと思います。

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榎並さん、長時間にわたって、こちらの質問にお答えいただき、ありがとうございました。こうした時代だからこそ出来ることを探していかなければならないということに気がつきました。また、この状況だからこそつけることのできる力もあるのだと気づき、今後、今できることを精一杯やっていこうと思いました。これからも様々な考えに触れて、自分自身の考える「よい企業とは何か」の答えを見つけていきたいと思います。

                                                                                     出見世ゼミナール 19期生

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