2024.03.04
西剛広ゼミ インド(IIMB)研修に関する報告②
3年 岡海月(西ゼミ所属)
①諸活動の報告について
まずこちらが今回のインド研修における全体スケジュールである。本項目ではお世話になったIIMB校との活動に絞り報告を行う。
校舎に到着後、今回の研修に協力してくださった、みずほインド日本研究センターに所属する方々とオリエンテーションを行なった。
挨拶を交わした後、日印間の異文化コミュニケーションに関するDr. Srivaniのレクチャーを受けた。この講義では、日本語とサンスクリット語の言語的なつながりや、インドの宗教と日本の仏教との強い文化的結びつきについて学んだ。例えば、日本語の文法構造や語彙にサンスクリット語からの影響が見られること、また、インドの宗教が日本の仏教伝播において重要な役割を果たしてきたことなどが詳しく説明された。これらの歴史的・文化的つながりは、日印間の深い関係性を示すものであり、両国間の相互理解を深めるのに役立つ知識である。
続いて、Dr. Adityaのレクチャーでは、サプライチェーンにおけるトレードオフの関係性に焦点を当てた講義が展開された。具体的には、コールセンター業務におけるスタッフの増員と、それに伴う待機時間の短縮と出費の増加というトレードオフについて専門的な視点から享受を受けた。この講義ではスタッフを増やすことで顧客満足度は向上するが、一方で人件費や運営コストが増加するというジレンマについての洞察が提供された。このセッションを通じて、相反する利益間のバランスをどのように取るか、そしてビジネス上の問題に対して最適な解決策を見つけるためのアプローチについて理解を深めた。
※上記の方々は左からProf. Jaideep Sarkar, Prof. Saideep Rathnam, Mrs. G, Sowmya。IIMB校Mizuho India Japan Study Centreの代表陣
※trade-offに関する講義をしてくださったDr, Adityaの写真
午後は、バンガロールに本社を構える世界有数のIT企業、Infosys Limited社への企業訪問を行った。Infosysは、その革新的なビジネスモデルとテクノロジーの先進性で知られている。施設内には学校や寮が完備されており、従業員に対して継続的な教育と優れた生活環境を提供していることがわかった。これは、企業の持続可能な成長と従業員の福祉への強いコミットメントを示している。
会議室に通された後、2時間にわたり企業側にインタビューを行なった。このセッションでは、Infosysのビジネス戦略、特にデジタルトランスフォーメーション、クラウドコンピューティング、人工知能などの最先端テクノロジーへの取り組みについて深く掘り下げた。同社は、顧客企業のデジタル化を支援することで、急速に変化するグローバル市場において競争優位を維持している。
その後、キャンパスツアーを行い、様々な設備を見学した。特に注目すべきは、Infosysの研究開発部門である。ここでは、最新のテクノロジーを駆使したソリューションの開発に専念しており、持続可能な技術革新を目指している。また、同社の社内起業家精神を促進するプログラムにも触れ、従業員が新しいアイデアを提案し、それを事業化する機会を提供していることが印象的だった。
この訪問を通じて、Infosysがいかにしてテクノロジーの進化に対応し、それをビジネスの成功に結び付けているかの洞察を得ることができた。同社の経営哲学、特に人材育成とイノベーションへの重点投資は、学ぶものが多かった。(権限の問題以上写真なし)
※Image provided by IIMB (Microsoft IT Bangalore)
・9月5日
この日は、Dr. Nishanthによる多層トリプルヘリックスモデルに関する興味深いレクチャーから始まった。このモデルとは、学校、企業、政府という社会の三つの主要な要素間の相互作用と相互依存関係を探求するものである。レクチャーでは、これらの要素がどのように連携し、社会的、経済的、技術的な革新を促進するかについて詳しく説明がなされた。特に注目すべき点は、物事を単なる平面的な相互作用で捉えるのではなく、より複雑かつ立体的な視点で捉えることの重要性である。Dr. Nishanthは、このアプローチが新たな視点を提供し、従来の問題解決手法に対する深い理解と創造的な解決策を導くことを強調した。例えば、教育機関、企業、政府がそれぞれのリソースと専門知識を共有し合うことで、持続可能な開発や技術革新を促進できるという点が示された。
さらに、このレクチャーでは、多層トリプルヘリックスモデルを活用して、現代の複雑な社会的および経済的課題に対処する方法についても掘り下げた。具体的な事例として、環境問題への取り組みや新技術の開発における、学術機関、企業、政府の協力の重要性が議論された。このモデルに基づく協力によって、より効果的かつ持続可能な解決策を生み出すことができる。
このレクチャーを通じて、学校、企業、政府の三者が相互に影響し合いながら、社会の持続的な発展に貢献する方法を学んだ。多層トリプルヘリックスモデルは、現代社会の複雑な課題に対する新たな理解とアプローチを提供するものであり、今後の研究や実践において非常に有用な枠組みである。(写真無し)
その後、我々はProf. Saideep Rathnamによる観察論のレクチャーを受けた。このセッションでは、研究対象を客観的に分析し、情報を抽出する方法について学習した。Saideep教授は今回の研修で最も時間を割いて指導してくださった方で、企業訪問を含む多様な課題に関する学習を用意してくれた。
観察論についての理論的な学びが終わると、実践的なウォーミングアップとして学内食堂にある厨房の観察へ向かった。最初の課題は、食堂の清潔さと安全性を客観的に分析し、結果をポストイットにまとめるというものだった。例えば、厨房が清潔に見えた場合(これは主観的な感覚)、なぜそう見えるのか、どれくらいの頻度で掃除が行われているのか、厨房内でどの程度意思疎通が図られているのかといった詳細を掘り下げることで客観的な分析を行う。
もう一つの例として、厨房で使われている水が清潔であるとした場合、その理由を深掘りする。インドにおいて水を浄化する方法には、水をフィルターで濾し、その後煮沸するという過程がある。さらに、その浄水システムは毎月メンテナンスされていることが分かれば、厨房の水が清潔であると判断できる。このように5W1Hを用いて事実に基づくロジックを導き出すことの重要性と魅力を学ぶことができた。
※observation skillに関するレクチャーをしてくださったProf. Saideep Rathnam。
食堂で昼食をとった後、午後はKrマーケットをはじめとする食品を取り扱う市場への訪問と市場調査を実施した。Krマーケットはバンガロールのメインマーケットであり、多くの地元民や飲食業者がここで食品を購入している。市場に足を運び、観察論の手法を活用することで、バンガロールのサプライチェーンに関して高い視点からの理解を深め、食品の安全性と清潔さを多角的に俯瞰することができた。
市場での観察では、多様な食品がどのように展示され、管理されているかに注目した。例えば、新鮮な野菜や果物の陳列方法、肉や魚製品の保存状態、さらには販売者と顧客間のやり取りなど、日常的な活動から多くの情報を収集した。これらの観察から、地元の食文化や市場の動向、消費者の好みや行動パターンに関する洞察を得ることができた。
また、市場調査を通じて、バンガロール市内での食品の流通プロセスや、地元の経済活動における市場の役割についても学びがあった。例えば、地元の農家や食品供給業者と市場の間の相互作用、食品の品質管理や価格設定の仕組みなど、サプライチェーンの各段階における独自の特徴や課題が明らかになった。