2025.07.03
加藤拓巳ゼミの学生が日本デザイン学会にて研究成果を発表
加藤 拓巳(担当教員)
2025年6月27-29日の日本デザイン学会第72回春季研究発表大会にて、商学部 加藤拓巳ゼミの3年生が研究成果を発表した。
<研究1>
著者:秋本光紀、河西淳志、重野ゆら、清水碧音、林咲希、加藤拓巳
タイトル:デジタルヒューマンへの人間的接客の適用がもたらす消費者の印象
形態:口頭発表
概要:おもてなしは競争力の原点であり、多くのサービスで重視されている。しかし人件費の高騰や需要からデジタル化が進む一方で、消費者に受け入れられない例もある。デジタル接客では人間の繊細さを表現できず、違和感が生まれると考えた。そこで本研究では、デジタルのおもてなしが有効かを検証するため、オンライン調査でランダム化比較試験を行った。その結果、デジタルヒューマンが顧客の名前を呼ぶ、友達口調で話す、視線を外すなどのおもてなしは、利用意向に悪影響を与えることがわかった。人間とデジタルの接客は別物であり、安易に適用してはならない。企業はおもてなしのデジタル接客マニュアルを策定し、スタンダードを築く必要がある。
<研究2>
著者:武藤結衣,岩井隆宏,田中美桜里,チョブギョン,松本佳奈,加藤拓巳
タイトル:食品広告における視覚的要素が商品魅力に与える影響
形態:口頭発表
概要:食品の「おいしさ」は味だけでなく視覚的要素にも大きく左右される。しかし飲料分野では、ライフスタイルの変化やフードポルノ的視覚表現の視点が不十分であった。本研究では、コーヒーのスリーブが本来の機能的役割を超えて情緒的価値を持つ点と、ミルクが混ざる過程を見せる演出効果に着目した。オンライン調査によるランダム化比較試験の結果、スリーブ付きコーヒーはより魅力的と評価され、ミルクが完全に混ざった状態よりも混ざり途中の状態が好まれることが判明した。これらの結果から、企業は商品の魅力向上において視覚的要素を重視し、スリーブやミルクといった機能的要素も情緒的役割を担うことを考慮した設計が必要であることが示された。
<研究3>
著者:中村梨琴、高橋耀生、奥澤知世、石尾美里、大坪稜、加藤拓巳
タイトル:AIアシスタントの不完全性と成長性がサービス魅力に与える影響
形態:口頭発表
概要:2025年は「AIエージェント元年」である。企業はAIの完全な性能を追求した結果、価格競争に陥っている。今後は感性的価値による差別化が重要になると考えられるため、本研究では「AIアシスタントにおいて不完全性と成長性はサービスの魅力に影響を与えるか」というリサーチクエスチョンを設定した。ランダム化比較試験の結果、不完全性は支持されなかった一方で、成長性は有意に魅力を高めた。消費者はAIアシスタントに対して有用性を前提として求めているため、不完全性は魅力として捉えられなかったと考えられる。しかし、消費者が能動的に情報を教え、AIを育てるという成長性は価値として訴求していくべきだ。これまで企業が作り上げてきた基本性能に、成長性を掛け合わせることでさらに強力なAIサービスが構築できることを示唆した。