2020.08.28
「地域の魅力をどう伝えるか」をオンラインでどう学ぶか
中川秀一(担当教員)
COVID19の影響のために対面講義やフィールドワークが禁止される中、オンライン講義で新しい授業の方法を受講生たちと模索することから今年度のテーマ実践科目は始まった。新年度がはじまった4月当初は、例年行ってきた原宿での夏のイベント開催を視野に入れていたが、徐々にその実施可能性がほとんどないことが明らかになった。しかし、それと同時並行して、Zoomミーティングを活用した講義方法を検討しており、今期は、ゲスト講師をZoomミーティングにお招きする連続特別セミナ―の企画と実施を試みることとした。
こうした授業を通じて、本講義のテーマである地方の魅力を伝えることを中心に、地域が主体となって地域づくりをすること、そのときの外部人材(特に大学生)のかかわり方を議論した。Zoomミーティングには次のようなテーマで多彩なゲストに講師をお願いした。
「専門家主導から住民主体へ」広石拓司さん/㈱empublic代表取締役
「地域の魅力をどう伝えるか」武田昌大さん/㈱kedama代表取締役 シェアビレッジ村長
「議員からまちづくり会社へ:岐阜県飛騨市から」 仲谷丈吾さん/㈱「飛騨ゆい」、前飛騨市議会議員ほか
「岐阜県郡上市の魅力をどう伝えるか」 後藤正和さん/奥美濃カレー協同組合事務局長、田中康久さん/岐阜県郡上市議会議員
「横浜市石川町の取り組みと濱橋会」大島重信さん/横浜市石川町商店街 NPO濱橋会 理事長
「埼玉県秩父市兎田ワイナリーのコロナ禍での取り組み」深田和彦さん(秩父ファーマーズファクトリー兎田ワイナリー代表取締役)、井上保之さん(同)
授業の後は、Zoomでの懇親会を開催し、授業とは違った雰囲気でいろいろなお話を伺う機会を設けることもできた。
研究成果報告会には、明治大学商学部卒業生の永塚真也氏を外部専門家委員にお迎えした。永塚氏は、山口県長門市で地域おこし協力隊として活動を行っている。長門市は、星野リゾートが参入し、観光資源の核である温泉街の再開発が進められ、注目を集めている。永塚氏は、外部人材として、長門市からの魅力・情報発信を課題として活動している。永塚氏には、星野リゾートを中心とする長門市の温泉街の再開発の状況を紹介と、都市(東京)で生活し地方の活動に参入しようとしている若者の観点から受講生たちの報告にコメントをお願いした。
学生たちは、それまでの講義を参照しつつ、地域の活動に関する次のようなテーマを設定して、研究報告を行った。
「地方のサテライトオフィスについて、地方の働き方」
「星野リゾートの立地戦略」
「コミュニティーエネルギーを通じた地域再生」
「ソウルフードの地域間競争と地域活性化」
「SDGsから考える地方創生と関連する企業の取り組み」
「ふるさと納税を活用した地域活性化」
「新しいメディアを通じた地方創生への取り組み」
夏季休講期間中は、これらのテーマに関するここまでの調査にもとづく考察結果をまとめる作業をグループに分かれて行っており、ご協力いただいた外部講師の方々にもお送りする予定である。
写真は、岐阜県飛騨市山之村地区の方々にご協力いただき、5/22にZoomでの懇親会で試行したときのもの。学生たちは毎回担当グループを決めてゲスト講師との事前打ち合わせを行うなど有意義な講義となるように準備を行った。準備を重ねても、特別講義の際には、途中、電波の状況が悪く、動画資料を活用できないときもあった。講義はすべて録画して記録し、Commons-iに掲載して振り返りができるようにした。
オンライン講義のため、大幅に内容を変更し当初想定していた内容の授業を行うことはできなかったが、外部講師の方々にご協力いただくことで、学生たちの学ぶ機会を確保することはできた。新しい講義のあり方を学生たちと意見を出し合って模索する試みの過程は、それはそれである種の創造的な活動を実現できた面もある。また、オンラインを用いて遠隔地域の方々にも講義に参画していただく方式は、今後の講義のあり方を発展させるきっかけを与えてくれているとも感じている。困難ではあったが、予期せぬ成果もあったと思う。