2024.12.05
ゲストスピーカーによる特別授業実施報告:塚原正俊氏【次世代シーケンサがもたらした革命:情報量と解析技術で世界が変わる】
浅賀 宏昭(担当教員)
1.実施日
2024年 11月18日(月)17:10~18:50
2.実施場所
和泉図書館ホール
3.科目名
総合学際演習(2年)
4.ゲストスピーカー
塚原正俊 氏(バイオジェットCEO, 琉球大学特命教授)
5.実施内容
和泉図書館ホールにて、塚原正俊氏による特別授業を実施した。次世代シーケンサ(NGS)とは、総合教育科目「生命科学B」の前半でも解説する技術で、2005年頃に登場したDNAの塩基配列を極めて効率よく決定できる。なにしろヒトゲノムプロジェクトでヒトゲノムの約8割を解読したと言われたキャピラリーシーケンサ(百万塩基/日)のおよそ百倍の機能を持ち、しかもコストを抑えられるというまさに画期的なシーケンサである(現在の最新型NGSはさらにその千倍の速さ)。百年分の新聞の情報量にも相当するというヒトゲノム情報はまさにビッグデータだが、NGSを使えばそれを数日で、しかも10ドルで解読できる時代となったのである。NGSを活用したら時代が変わり、革命が起こったとまで言われている。
当日は私のゼミ生、「生命科学」講義の受講生のほか、他学部の学生も参加してくださり、賑やかな雰囲気で特別授業を開催することができた。
塚原氏は、沖縄でベンチャー企業・バイオジェットを2011年に起業し、現在まで維持して発展させている。その経営の傍ら、関連学会では賞を獲得され、博士の学位も取得されて、さらに琉球大学特命教授にも就任されており、経営者で研究者という二刀流を地で行っているアクティブな方である。
今回も沖縄からわざわざ足を運んでいただき、その経営に関することも含め、同社でフルに活用されているNGSの特徴と、その応用例についての具体的紹介とともに、学際的で非常にわかりやすい解説をいただいた。
バイオジェットはNGSに加えて、最近は生成AIも活用していることも話された。生成AIを使うと人間は陳腐化されると言われているが、モノは使いようで、うまく使えば私たちのスキルを上げられるという話は興味深く、学生たちの興味を掻き立てたようであった。さらに黒麹菌を使って醸造・蒸留して製造する泡盛の新商品開発、新型コロナウイルスの世界への拡散と対策、がん治療のプレシジョンメディシン(精密医療)、生態学分野(環境DNA)、犯罪捜査への応用など盛りだくさんであった。どれも魅力的な話で、アンケートでは時間があればもう少し深く聴きたいという感想が多く寄せられた。