ゼミ

2025.12.05

アートを通して"話す力"を育てるゼミって?

商学部3年高橋(企画)・4年黒古(取材・文)〔商学部の現場〕編集部記者

商学部4年〔商学部の現場〕学生記者黒古です。「多様な学び」を実践する明治大学商学部。しかし、何か漠然としていてその実態がイメージしづらいと考える人が多いのではないでしょうか。そこで商学部の多様性をできるだけ具体的に伝えるためにゼミ活動を紹介します。今回は筆者自身も所属する「佐々木美加演習室」の活動について、ゼミ長・小川丈一郎さんに対談形式で話を聞きました。この対談を通じて、商学部の「多様な学び」の魅力が伝われば幸いです。
「BIWAKOビエンナーレ」に参加中の小川さん

黒古:まずは所属するゼミの研究、活動内容について簡単に教えてほしいです。

小川:僕が所属する「佐々木美加演習室」ではアート作品鑑賞が及ぼすコミュニケーション能力への効果を研究しています。アートといっても中世や近世の教科書に載っているような古い美術作品ではなく、「太陽の塔」で有名な岡本太郎氏などに代表されるいわゆる現代美術(コンテンポラリーアート)の作品をテーマにすることが多いです。

アート作品を鑑賞することでそれぞれが得た感想やインスピレーションなどの情報を対話形式で発信しあう「対話型鑑賞」を行い、コミュニケーション能力の向上を目指しています。ゼミのメンバーがそれぞれ訪問したい都内の画廊や展示会を提案して実際に赴いたり、1年に1回の合宿を行うなどのフィールドワークが多いのが特徴です。また佐々木先生が所有する作品を研究室で鑑賞することもあります。直に作品を見ることでスケール感や質感を知ることができ、より多くの情報をキャッチできます。まれにアーティストの方が在廊していることがあり、作品の感想を伝えたり、意見交換をしたりするなど貴重な体験もできます。

黒古:次に、先ほど言っていたゼミの合宿について詳しく紹介してほしいです。

小川:「佐々木美加演習室」が行う合宿は、東京を飛び出し、日本各地の大規模な芸術祭に参加するというものです。2023年は群馬県中之条町で開催された「中之条ビエンナーレ」、2024年は新潟県越後妻有エリアで開催された「大地の芸術祭」、そして今年2025年は滋賀県近江八幡市で開催された「BIWAKOビエンナーレ」に参加しました。これらの規模が大きい芸術祭に参加できることのメリットは普段とは違う刺激を貰えることです。都内の画廊などは比較的こじんまりしていて、作品のスケール感が限られてしまっていることが多いです。地方の広大な土地を利用した芸術祭で鑑賞できるサイトスペシフィックの作品群はダイナミックで、普段、都内で見ている作品とは別の力強さを感じることができます。単純に展示作品数が膨大なので、アートが好きな僕にとっては一日中たくさんの作品を鑑賞していられる夢のような時間ですね。

黒古:展示会場も複数あって、軽く観光しながら巡るのも楽しかったね。とはいえ、まさか808段石段を登って会場に行く羽目になるとは思わなかったけど(笑)。ただ、頂上からの琵琶湖のオーシャンビュー(?)と作品はどれも苦労してみる価値のある素晴らしいものだったので良しとします。

会場の長命寺に向かうための808段を登る様子

黒古:続けて、このゼミに参加しようと考えた動機などがあれば教えてほしいです。

小川:元々、漠然とアートには興味があったし、アートを知ることで僕個人の活動に何か新たなインスピレーションを与えてくれるのではないかと思い、このゼミを選びました。僕は音楽や服飾などのカルチャーに根差した活動をしています。カルチャーとアートは密接に関わっているものだと考えていたので自分にうってつけのゼミでした。

黒古:僕は特に活動とかはしていないけど同じような志望動機でした。音楽は好きだし、洋服も好きだし、それらのカルチャー的なことがアートに密接に関わっていると同じように考えていたから共感できます。他のゼミ生たちもきっと同じような志で参加していたと思います。実際、ゼミで学んだことは自身の活動の中で活かされていると思う瞬間はありますか?

小川:あります。特に服飾の活動で多く影響を受けました。コンテンポラリーアートはブランドのデザイナーの方が表現方法の一つとしていることもあります。そういった方々の作品を鑑賞したことで、自分が作成しようとした服のテーマのヒントを得ることができました。また、作品からだけインスピレーションを受けたわけではなくて、ゼミのメンバーが自分と同じ作品を見たとしても必ずしも同じ感想を持つわけではないこと、それぞれ別の観点からのアプローチをしていることが面白いと思ったし、刺激を受けました。

黒古:確かに自分では思いつかなかったアプローチを聞くことはいい刺激になりました。次回は自分も切り口を変えてみよう、俯瞰してみようと思えるようになりましたよね。研究のゴールでもあるコミュニケーション能力の向上という点では、何か実感できたこととかはありますか。

小川:僕は自分の思いをちゃんと言葉にして伝えるということが本当に苦手でした。でも、コンテンポラリーアートという不明瞭で正解のない抽象物の解釈を他の人に分かりやすく伝えることを何度も繰り返すことで言語化能力がかなり強化できたと思います。ゼミ以外の他の授業においても特にグループワークの場面で自分の意見を論理的に伝えられるようになったと思います。

黒古:ありがとうございます。最後に、気になっている人がいるかもしれないから聞くんだけど、アートを題材にしているということはやっぱり絵が描ける、作品が作れるといった人じゃないと入れないゼミですか。

小川:全然そんなことありません。むしろ絵を描いてる人なんかほとんどいないと思います。黒古なんか絵心ゼロでしょ。

黒古:はい(笑)。中学、高校通して美術の評定2です。でも逆に僕のように絵心なんかなくてもアートに興味があれば、情熱があれば有意義な活動ができるということですよね!

小川:その通りです。アートに興味があって画廊や展示会に行ってみたいけど敷居が高いと感じている人、自分のコミュニケーション能力を改善したい人、これからアートが好きになりたい人「佐々木美加演習室」は大歓迎しております。

黒古:この対談を読んだ人が少しでも興味を持ってくれたらうれしいですね。

小川さんありがとうございました。

「多様な学び」を実践する商学部の魅力はこの記事を通じて伝わったでしょうか。商学に限らず他分野の学問にも触れられる学びの環境が明治大学商学部は充実しています。

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