授業

2026.06.20

ゲストスピーカーによる特別授業実施報告:アルン・シャム氏(肩書:国立国語研究所プロジェクト非常勤研究員)『「おしゃべり」から「対話」へ ―ことばと人の交差点から―』

黒﨑 典子(担当教員)

 マラヤーラム語を母語とするアルン・シャム先生にお越しいただき、異なる言語背景を持つ人達が交差する場での「対話」について、大変示唆に富むお話をしていただきました。

まず、「多言語環境における<対話>」について、日本への留学、インドでの大学進学における使用言語の問題等ご自身のライフストーリーを交えながら、インドの多言語環境について多角的にご説明いただきました。特に生活言語と学習言語が異なるということは、受講生にとって印象深かったのではないかと思います。

そして、フランス人が西諸弁で話す宮崎県小林市のPR動画、町内会会報、ご自身が主催するオンラインフォーラム「世界と私」等を例に、ことばを介して出会う人たちを対等にするための工夫、迷い、難しさについてお話しくださいました。人と人とが対等になるためには、「人」が現れない「管理のことば」を「非管理のことば」にしていく必要がある、言語とは意思伝達のためだけではなく、使用言語を選ぶことで相手との関係を構築する手段ともなる、という指摘は、日本語のみの環境にいると気づきにくいため、受講生にとっては特に意味あるメッセージとなったことでしょう。

 最後に、「ことばを習う・使う」時には、「非人間化しない・主語を広げず主体化する」ことが大切だというお話をしてくださいました。

 当事者から直接話を聞く機会も少ないインドの多言語環境について学べただけではなく、普遍的なことばと対話の意義について考えることができた、大変有意義な時間となりました。

 

受講生の感想(抜粋)

「特に印象深かったのは、町内会のエピソードです(※町内会会報の餅つきの写真に外国人と思われる参加者が写っているにも関わらず、本文では一切触れられていなかった)。私は当初、それを「異文化交流」だと考えていました。しかし、アルンさんが町の一員として受け入れられ、それを嬉しく感じていたという話を聞き、自分の考え方を見直すきっかけになりました。無意識のうちに「海外の方」と区別して見ていたのは自分の方であり、当たり前だと思っていた自分の視点そのものについて改めて考えさせられました。今回の講義を通して、唯一の正解を探すのではなく、相手との違いや背景を前提に、関係性を育みながら考え続けることの重要性を学びました。これから多種多様な人々と関わる機会が増える中で、今回学んだ「非管理の言葉」という視点を忘れず、相手と丁寧に向き合っていきたいと思いました。」(2年 風間太智)

「自分が無意識のうちに日本人としての当たり前の感覚で物事を見ていたことに気づかされました。また、多様な人と関わり、多様な経験をすることで、自分にはない視点を得られることの大切さも学びました。今後は一つの見方にとらわれず、さまざまな立場や価値観を意識しながら物事を考えていきたいと思います。」(2年 豊田彩衣)

「私はこれまで、言語学の研究には多くの言語を話せることが重要だと思っていました。しかし、講義での「管理のことば」のお話を聞き、言語数そのものではなく、多様な立場や価値観を理解しようとする姿勢が大切なのだと気づきました。対話やコミュニケーションについて改めて考えるきっかけとなり、とても興味深い講義でした。」(2年 李洋洋)

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